どのくらいたった…?
たぶん1分もたってないんだろうと思う。
でもあたしにとっては10分でもあり、20分でもあり。
地獄のようなその数秒を救ってくれるようにグイって腕を引っ張られた。
その相手が誰なのか、今どういう状態なのかなんて全く分からなくて…
「美桜さんこいつ飲みすぎ!ちょっと外連れていきますね。心配しないで大丈夫ですから」
優しいなっちゃんの声だった。
それだけで、たったその言葉だけであたしは今の今まで堪えていた想いが涙に混ざって一気に溢れ出した。
立ってもいられないあたしの腰に腕を回して抱えるようにあのざわめきの中から連れ出してくれたなっちゃん。
あたしが消えたことに誰も気づいていない。
あたしがこんな風に泣いていることに、黎弥は気づきもしない…
どうしようもなく涙が溢れて止まらなくて…
ただただ泣くあたしを、ずっとなっちゃんの腕がギュウって守るように包んでくれていて…
これ以上何も入り込めるものなんてないってほど、その腕に抱きしめられていた。
ずっと分かっていたこと。
分かっていたはず。
黎弥が好きなのは莉子さんだって。
あたしが黎弥を好きなことと同じように、黎弥が好きなのは莉子さんだって頭では分かっていた。
莉子さんと黎弥が笑いあっていたって悲しむ必要はないって、ずっと思ってきて。
でもまさか自分の目の前で黎弥がそのありったけの想いを口にするなんて…
――――残酷すぎる。
不意になっちゃんの腕が背中からスッと離れると、あたしは近くにあった椅子に座らされた。
涙はまだ止まらなくて…
「ゆき乃…」
見上げたそこにはあたしの鞄を持って来てくれた竜太くんと、後ろにまこっちゃんがいた。
二人とも心配そうにあたしを見ていて。
クシャってあたしの前髪を触ると「ごめん、黎弥のこと止められなかった…辛かったな」優しくそう言ってくれる竜太くん。
それだけ言って又お店の中に戻って行った。
残ったのはまこっちゃんで、なっちゃんと入れ替わるように、座っているあたしの前にしゃがみ込んだ。
「悪乗りしすぎ」
「………」
「ほんとあの男、ゆき乃さんみたいないい子が想ってくれてんのに、その魅力に気づかないなんてなんて奴!」
「………」
「今時みんなの前で告白なんて流行らないし!」
「………」
「ほんと、最低な男!!」