「………」
「もう、忘れろよ」
「………」
「あんたなんて好きじゃない!って言えよ」
「…言えないよ…」
あたしの言葉にまこっちゃんの大きな手が髪に触れた。
「言えよ」
「それでも好き」
「もう、やめろよ」
「出来ない」
「出来るって」
どうしてまこっちゃんはそんな意地悪言うの?
あたしが黎弥を好きでいちゃダメなの?
「どうしてっ!!どうして莉子さんなのっ!!なんであたしじゃないのっ!!何が違うっ?あたしってそんなにダメっ?あたしってそんなにっ…」
感情が抑えられなくて、まこっちゃんの胸元を夢中で叩いた。
こんなのただの八つ当たりだって分かってる。
選ばれなかった自分の立場だってちゃんと分かってる。
でも、悔しくて…
どうにもできない想いを、今目の前にいるまこっちゃんにぶつけるしかできなくて。
泣き叫びながら夢中で叩いていた。
「ゆき乃、大丈夫だから…あんなの酒入って調子のってただけだし、気にすることないって…な?」
それでもそんなあたしを落ち着かせるように、宥めるようにまこっちゃんの手があたしを撫でる。
その次の瞬間、影が動いて顔を上げたあたしの目に飛び込んできたのは、紛れもなく黎弥の好きな莉子さんで…
「やっ!」
無意識だった。
そうほんの一瞬声にして、莉子さんにクルって背を向けた。
同時にあたしの背中にまこっちゃんの手が回されて…
「夏喜さん俺、ゆき乃さん連れて帰ります」
一言そう呟いた。
莉子さんに対してどうしようって思いと、それでも今この瞬間は会いたくなかった…って思いがあって。
分かっていた事実を目の前に突きつけられてしまったあたしに、莉子さんを見る余裕も選択肢もなかった。
ただあるのは、もうこれ以上辛い想いは嫌だってそんな自分勝手なことばかりで。
絶対にいなくなったあたしを心配して捜してくれたんだって分かった。
そんな優しい莉子さんだからこそ、黎弥が好きになったんだって。
それでもどうしても振り返ることが出来なくて、余計に涙が零れてしまうあたしをまこっちゃんの腕が抱きかかえてくれてゆっくりと歩き出す。
背中に痛いほどの視線を感じて…
莉子さん、ごめんなさい…