飲み始めて1時間が過ぎた頃、あたしの心臓を震わす歓声と拍手が黎弥達のテーブルから上がった。
ドキッとして視線を移すとそこにはまるであの日と同じにビールを一気する黎弥の姿。
それはもう条件反射とでもいうべき?
あたしは震える体を押さえて視線を莉子さんに飛ばした。
莉子さんも吃驚した顔であたしを見返して、でもその顔は困った風。
黎弥の足は当たり前のようにあたしとは反対側にいる莉子さんに向かっていて…
「もうやだ…」
二度もこんな体験しなきゃならないのかと思うあたしは、悲しみの涙が溢れて俯いた。
でも歓声の中聞こえてきたのは意外な言葉だった。
「すんません俺、あんな告白しといて…他に好きな奴出来ました!!」
体はビクッとしたけど、あたしはとうてい顔を上げる事なんて出来なくて、そんなあたしの側で聞こえた黎弥の声は、今まで聞いたどの声よりも優しかった。
「好きだ!!」
すぐにあたしの隣のなっちゃんが「オレぇ?」って言う。
「アホ、お前じゃねぇ!!…ゆき乃、こっち向け…」
それはあたしに向けられた言葉で、名前を呼ばれて顔を上げたあたしに
「何泣いてんだよ、ばーか」
そう言った黎弥は泣きそうに見えて。
突然グイッて腕を引っ張られたあたしは、黎弥に連れ去られてお店の外に連れて行かれた。
踊り場になっているすぐ横に細い通路があってそこで黎弥は止まった。
「やっと気づいた俺、お前が好きだ…」
甘く低い黎弥の声にますます涙が溢れて…
「莉子さんは?」
「好きだった。憧れだったんだと思う。女らしいな〜とか…でも無理って分かってたし、俺お前がいるってなんか分かんねぇ自信もあって…だからそんなに落ち込みもしかなった。むしろお前に¨嫌いって言え¨って言われてすげぇショックで。¨言えるか¨って思ったし、傍にいて欲しいとも思った」
黎弥の言葉に体の力が抜けそうで、グイッと黎弥の腕に掴まった。
「嘘だよそんなの…」
「嘘じゃねぇよ」
「じゃあどうしてあの時手離したの?」
「あの時?手?」
「ご飯行こうって黎弥が誘ってくれたあの日。手握ったでしょ黎弥。あの時あたしがもう少し…って言ったらダメって…帰れ…って言った」
黎弥の顔がほんの少し気まずそうに微笑む。
でも次の瞬間、あたしはフワッっと黎弥の温もりに包まれた―――――…