えっ!?
あたしの髪に顔を埋める黎弥は小さく溜息をついた。
「あれは、お前のこと抱きしめたくなったから…ゆき乃を抱きしめたくて我慢できそうもなかったから、だからわざと突き放す言い方するしかなくて。マジ理性ギリギリだったんだよっ」
「…うそだよ」
「うそじゃねぇよ」
「抱きしめて欲しかったよ、そんなの。もう黎弥に嫌われたのかと思って…あたし…あたし…」
鼻の奥がツーンとして痛い。
見つめる黎弥の顔はさっきから涙で滲んでいて。
あの日の悲しみを思い浮かべるあたしは、更に涙が込み上げてくる。
「悪かったって。つか、抱きしめただけじゃ止まらねぇってそう思ったから…あんな場所で何もできねぇだろ、さすがに…」
「できない…?」
キョトンと見上げたあたしに、いっそう苦笑いの黎弥の瞳。
つぶらな目はあたしをしっかりと映していて。
サラっとあたしの前髪をすくい上げてそこにそっと唇を押し当てた。
ずっと欲しかった黎弥の温もりにあたしは涙が止まらない。
これは、夢?
ずっと夢見ていた事が現実に起こっているだろうこれは夢?
もしかしてあたし今…眠っているの?
どうか夢ならいつまでたっても覚めないで…
もう黎弥が莉子さんを好きだった過去とか、沢山傷ついた事とか、どーでもいい!
あたしは黎弥が好きで好きでたまらない。
目の前にいるこの人が、世界で一番愛おしいんだ。
「…ふぇっ…」
想いが溢れて止まらなくて…
「好きだ…」
熱い想いを確かめるみたいに黎弥がそう言ってくれた。
欲しくて欲しくてたまらなかったその魔法のような言葉はあたしだけに向けられたもので…
どうしようもなく黎弥が大好きなんだ。
「ゆき乃…」
背中の手があたしの頬を掠めてそっと目を閉じる――――――
「どーいうつもり?」
不意に聞こえてきた声にキス寸前…あたしと黎弥は咄嗟に離れて声の方に視線を向けると莉子さんとまこっちゃんの姿。
あの日あたしが泣いていた椅子に座って、同じように泣きそうな顔の莉子さんと優しいまこっちゃんの声。
あたしと黎弥がいる通路のすぐ隣にいる二人に、何となく息を潜めるあたし達。