「美桜、大丈夫?」
あたしの手を握って顔を寄せる。
「陸ちゃん…」
そう口に出したその名前がやっぱりどうにも愛しくて、あたしは涙が止まらない。
「美桜、ごめんな」
零れる涙を拭ってくれる優しい陸ちゃん。
パタンって音がすると、北人くんが病室から出て行った。
「わざと飲んだの」
「分かってるよ、全部分かってる。俺のせいだし!俺がサチコを連れて来たから…」
髪を撫でてそう言うけど、
陸ちゃんは全部を分かってないと思う。
あたしがこうして泣くから
お酒アレルギーって分かっていながらお酒を飲んだのは、陸ちゃんに気付いて欲しかったから。
あたしのことちゃんと見てて欲しかったから。
サチコがいたってあたしを隣に置いて欲しかったの。
あたしのこと彼女って紹介したんなら、あたしをいつも隣に置いて欲しかったの。
ここは、美桜の特等席だ…ってみんなに分かって貰いたかったの。
ここは、美桜しか座れない…って、誰よりサチコに思わせて欲しかったのに、簡単にサチコを隣に座らせた陸ちゃんを酷いと思ってしまう、そんな自分が嫌で嫌で仕方ない。
こんな汚い気持ち、陸ちゃんに言えるわけない。
こんな惨めな想い、陸ちゃんにバレたくないよ。
どうしようもない絶望感でいっぱいだった。
それから二日間仕事を休んだあたしは三日目出勤すると、心配顔の莉子とゆき乃ちゃんがいて…友達の温かさにジーンとしてしまった。
何だか一人で悩んでいるのが馬鹿みたいに思えて。
とはいえ、人の恋愛事情に自ら突っ込んでくる人なんてそういなくて、きっと二人ともあたしが口を開くのを待っているんだって。
「サボってんなよ」
声に振り返ると、健太だった。
相変わらず忙しそうな部署なのに、健太はよく自由に出歩いていて…
「自分だって」
そう言って笑った。