信じる強さ8


「美桜、大丈夫?」


あたしの手を握って顔を寄せる。


「陸ちゃん…」


そう口に出したその名前がやっぱりどうにも愛しくて、あたしは涙が止まらない。


「美桜、ごめんな」


零れる涙を拭ってくれる優しい陸ちゃん。

パタンって音がすると、北人くんが病室から出て行った。


「わざと飲んだの」

「分かってるよ、全部分かってる。俺のせいだし!俺がサチコを連れて来たから…」


髪を撫でてそう言うけど、

陸ちゃんは全部を分かってないと思う。

あたしがこうして泣くから

お酒アレルギーって分かっていながらお酒を飲んだのは、陸ちゃんに気付いて欲しかったから。

あたしのことちゃんと見てて欲しかったから。

サチコがいたってあたしを隣に置いて欲しかったの。

あたしのこと彼女って紹介したんなら、あたしをいつも隣に置いて欲しかったの。

ここは、美桜の特等席だ…ってみんなに分かって貰いたかったの。

ここは、美桜しか座れない…って、誰よりサチコに思わせて欲しかったのに、簡単にサチコを隣に座らせた陸ちゃんを酷いと思ってしまう、そんな自分が嫌で嫌で仕方ない。


こんな汚い気持ち、陸ちゃんに言えるわけない。

こんな惨めな想い、陸ちゃんにバレたくないよ。


どうしようもない絶望感でいっぱいだった。



それから二日間仕事を休んだあたしは三日目出勤すると、心配顔の莉子とゆき乃ちゃんがいて…友達の温かさにジーンとしてしまった。

何だか一人で悩んでいるのが馬鹿みたいに思えて。

とはいえ、人の恋愛事情に自ら突っ込んでくる人なんてそういなくて、きっと二人ともあたしが口を開くのを待っているんだって。


「サボってんなよ」


声に振り返ると、健太だった。

相変わらず忙しそうな部署なのに、健太はよく自由に出歩いていて…


「自分だって」


そう言って笑った。