「慎くん待って!」
「あ、歩くの早かった?ごめんね」
ふと目に入ったのは小柄な莉子の歩く歩幅にしっかり合わせて歩く長谷川くん。
遠目から見ててもほっこりした雰囲気を醸し出していて。
「やっぱりあたしが遅いんだって。せめてもうちょっと足が長かったらなぁ」
子供みたいな可愛いことを言う莉子に長谷川くんが嬉しそうに笑っていて。
「別に変わんないって!」
ブブブって堪えて笑う長谷川くんに、莉子の力いっぱいの鉄拳が入ってもパシってそれを優しく受け止めていて。
そんな二人を見ていたあたしの視界は勝手に滲んでしまう。
ヤバイ!
こんな所で泣けない!!
そう思って向きを変えたら、今度は遠めにゆき乃ちゃんと黎弥くんカップルが映った。
社員食堂のメニューを見ているゆき乃ちゃんの手は黎弥くんの腰を掴んでいて、もろに寄りかかっている。
「黎弥ぁどっちにする?」
「俺ペペロンチーノ」
「うそん!臭くなるのに?」
「お前も食ったらいーじゃん!」
「だから、あたしが臭くてもいいの?」
「おう、問題ない!」
「え…」
「あー悪いけど俺、臭さよりもチューしたい気持ちのが余裕で勝ってっから」
ニカって笑う黎弥くんに心底嬉しそうに抱きつくゆき乃ちゃん。
そんなゆき乃ちゃんを嫌とも言わずに、片手で抱きしめ返す黎弥くん…
超ピンクなんですけど!!
でもでも、少し前まではあたしと陸ちゃんだって誰にも負けないくらいのピンク色だったはずだよね?
おかしい、何かがおかしい。
「はぁ〜」
大きく溜息をついたらデスクの隣、なっちゃんも同じように溜息をついていて。
「なっちゃんどうしたの?」
あたしの問いかけに苦笑いをした。
視線の先はゆき乃ちゃんのデスクに飾ってある黎弥くんとのツーショット写真で…
うそ、もしかして…―――
「好きだったの?」
あたしの言葉に何も言わずにただなっちゃんは笑った。
そうだよね。
絶対なっちゃんゆき乃ちゃんのこと好きだと思ってたよ。
そっか、みんなそれぞれ辛い想い抱えてんだ。
誰にも言えない気持ち一人で抱えてんだ。
何だかなっちゃんのお陰で少しだけ元気が出たんだ。
誰かと比べるもんじゃないってそう思った。
あたしと陸ちゃんだって充分幸せだって思いたい。