堀さん、どこの部署の人なんだろ…?
何だかちょっと気になるな…
めっちゃかっこかったし。
でも確か「ハニー」とか「あいつ」とか言ってたし、きっと素敵な彼女がいるんだろうな…。
あんな素敵な人に愛されてる人って、いったいどんな人なんだろう?
いつの間にか、あたしの脳内は、たった今話したばかりの堀さんの事でいっぱいになっていた。
そしてその日以来、あたしはお店のメニューを食べるようになった。
夏喜さんはほぼ毎日来てくれて、ちょいちょい話しかけてくれるようになっていた。
あたしがまだ大学生だって話したらめっちゃ吃驚してたけど…
それでも態度を変える事なく話してくれる夏喜さんは、いつも「ハニー」さんにお菓子を多めに買って行ってくれた。
でも、決して二人一緒に来店されることはなくって…
日に日にあたしの中での疑問が大きくなっていく。
「あの、彼女さんはどんな方ですか?」
「はぁ…。それ聞く?香澄ちゃん地味にどエスでしょ?」
「え?…」
「家に帰る前に軽く食べなきゃ途中で力が出なくなる」って笑いながら言っていた夏喜さんの顔がほんの少しだけ曇ったんだ。
「まぁ、一言で言うと…“可愛い”んだ」
ポリポリって頬を掻いて照れ臭そうな表情の夏喜さんは、今まで見たことのない夏喜さんで…彼女の前でしか見せないだろうその顔を見れた気がして胸がキュンってした。
「ほっとけないっていうか、女の子ってそんなに強くないでしょう?…ゆき乃は好きな人の前で素直になれない子でね…俺がいなきゃダメなの…」
それは、あたしの想像を遥かに超えていて。
寂しげなのは夏喜さんの声なのか、表情なのか、雰囲気なのか…よく分からなかったけど、あたしはもうこれ以上聞いちゃいけない気がしたんだ。
大人の恋愛には沢山の矛盾があるのかもしれない。
ただ“好き”って感情だけで突っ走れるような関係じゃないのかもしれない。
夏喜さんの好きなゆき乃さんは…夏喜さんじゃない他の人を好きで…
それを全部分かった上で、夏喜さんはそんなゆき乃さんを受け止めようとしているのかもしれなくて…。
望みのない恋をする覚悟なんて、あたしには考えられないと思う…
たかが大学生のあたしには、そんな恋愛を受け止めることなんて…できそうもない。