憧れと恋の違い6


「あれは、ごめん。俺も北人も止めらなくて…お前のことすげぇ傷つけるようなことしたけど…でもな…」


申し訳ないって顔で“竜太くん”さんがあの人を見る。


「どうしてだろね?どうしてあたし、黎弥じゃなきゃダメなんだろうね。なっちゃんとか優しくて傍にいてくれる人、いるのに…」


えっ!!??

えぇっ??

あの人今「なっちゃん」って…

夏喜だから「なっちゃん」かもしれないって、咄嗟に思った。

でも夏喜さんじゃない「なっちゃん」なんて他にもいるかもしれないし…


でも―――


「時間なんて関係ねぇよ。お前が黎弥を好きになるのにどんだけの時間がかかったんだよ?確かに黎弥は莉子さん莉子さん言ってたけど…。でも今あいつの一番近くにいるの…お前だろ?ちげーのかよ?」

「分からないよそんなの。でももしまた黎弥があたしを拒否したら…そう考えると、例えなっちゃんが傍にいてくれても…きっともう立ち直れないもん…」


どうしてそんな意地悪言うの?って目であの人は“竜太くん”さんを見ていて。

あの人たちの言う「なっちゃん」が、どうしても夏喜さんに思えて仕方ない。

あの人がもしゆき乃さんだったら…

“黎弥”さんを好きなゆき乃さんが、夏喜さんの好きな人だったなら…

カタンとあの人が立ち上がった。


「もう行くね…。冷めちゃうからお弁当。これ黎弥に食べて貰うのが今のあたしの幸せなの。ありがとう竜太くん…ごめんね…」


お弁当?

あの人いつもお弁当持って来てたの?

もしかして一旦家に帰って作って、それで毎日届けていたの?

だからあんな大事そうに見つめていたの?

そんなの…夏喜さんだって敵わないや…


「ゆき乃!これ持ってけ」


そう言って差し出したのは、いつも夏喜さんが「ハニー」さん用に買っていたスイーツで。

さっきあの“竜太くん”さんも一つ買っていったものだった。


「え、これ…」

「それお前好きだろ?夏喜がよく買ってきてたよな!それでも食って頑張ってこいよ!」

「ありがとう」


満面の笑みをこぼすあの人は、やっぱり夏喜さんの好きなゆき乃さんだった。

あの日見た後ろ姿と一致して…

夏喜さん達の関係が深すぎて深すぎて…

たった少しの年の差が、とても遠く感じた。