「あれは、ごめん。俺も北人も止めらなくて…お前のことすげぇ傷つけるようなことしたけど…でもな…」
申し訳ないって顔で“竜太くん”さんがあの人を見る。
「どうしてだろね?どうしてあたし、黎弥じゃなきゃダメなんだろうね。なっちゃんとか優しくて傍にいてくれる人、いるのに…」
えっ!!??
えぇっ??
あの人今「なっちゃん」って…
夏喜だから「なっちゃん」かもしれないって、咄嗟に思った。
でも夏喜さんじゃない「なっちゃん」なんて他にもいるかもしれないし…
でも―――
「時間なんて関係ねぇよ。お前が黎弥を好きになるのにどんだけの時間がかかったんだよ?確かに黎弥は莉子さん莉子さん言ってたけど…。でも今あいつの一番近くにいるの…お前だろ?ちげーのかよ?」
「分からないよそんなの。でももしまた黎弥があたしを拒否したら…そう考えると、例えなっちゃんが傍にいてくれても…きっともう立ち直れないもん…」
どうしてそんな意地悪言うの?って目であの人は“竜太くん”さんを見ていて。
あの人たちの言う「なっちゃん」が、どうしても夏喜さんに思えて仕方ない。
あの人がもしゆき乃さんだったら…
“黎弥”さんを好きなゆき乃さんが、夏喜さんの好きな人だったなら…
カタンとあの人が立ち上がった。
「もう行くね…。冷めちゃうからお弁当。これ黎弥に食べて貰うのが今のあたしの幸せなの。ありがとう竜太くん…ごめんね…」
お弁当?
あの人いつもお弁当持って来てたの?
もしかして一旦家に帰って作って、それで毎日届けていたの?
だからあんな大事そうに見つめていたの?
そんなの…夏喜さんだって敵わないや…
「ゆき乃!これ持ってけ」
そう言って差し出したのは、いつも夏喜さんが「ハニー」さん用に買っていたスイーツで。
さっきあの“竜太くん”さんも一つ買っていったものだった。
「え、これ…」
「それお前好きだろ?夏喜がよく買ってきてたよな!それでも食って頑張ってこいよ!」
「ありがとう」
満面の笑みをこぼすあの人は、やっぱり夏喜さんの好きなゆき乃さんだった。
あの日見た後ろ姿と一致して…
夏喜さん達の関係が深すぎて深すぎて…
たった少しの年の差が、とても遠く感じた。