「ごちそーさん」
俯いていたあたしにそう声をかけて“竜太くん”さんはお店を出て行った。
入り口にショートヘアーの背が高め女性が立っていて、その人の髪を一撫ですると、その手を肩に回して仲良く歩いて行った。
どうしよう、夏喜さんに会いたい…
そう思っていた週明け、昼間のシフトに入っていたあたしの目の前に、少しだけ元気のない無愛想な夏喜さんが顔を出した。
「香澄ちゃん元気?」
そう声をかけてくれる夏喜さんの声はそれでもめっちゃ優しくて…
あたしはそれだけで涙が出そうになってしまう。
「夏喜さん…」
そう言うのが精一杯だった。
「香澄ちゃんどのスイーツが好き?」
そんなあたしの気持ちを分かっているのか?分かってないのか?夏喜さんは普通に話しかけてきて、逆にそれがあたしの気を落ち着かせてくれた。
「あ、あたしはこれですかね?」
チョコ味のマフィンを指差すと、「じゃそれ二つ頂戴!」って笑う夏喜さんに、お決まりのコーヒーとチョコマフィンを二つお盆に乗せて渡した。
「あ、一個は香澄ちゃんにあげる!そろそろ休憩でしょ?」
時計を見てそう言う夏喜さん。
あたしの休憩なんてまだまだ先なのに…
この時間帯に人が来ないって知ってるからだって、何だか可笑しくなってしまった。
「これからは毎日これにしよっかな、俺…」
マフィンを食べながらそう言う夏喜さんは、気持ちおとなしいって言うかいつもより空気が沈んで見えて…
ゆき乃さんと黎弥さん…うまくいったのかな?ってそんな事を考えた。
そんなあたしの考えが通じたのか、コーヒーを啜った夏喜さんは少し儚げに笑って口を開いた。
「ゆき乃と黎弥さんうまくいった。ずっと黎弥さんのこと好きで。ずっと知ってたんだけど…黎弥さんは他に好きな人がいてね…こー…気持ちが三角形になってて…」
そう言いながら顔の前に指で三角形を描く夏喜さん。
「俺のもんになるって思ってた訳じゃないけど…全然ダメだった…。まぁでもゆき乃の幸せな顔…超久々に見て…あぁ、俺じゃこの笑顔は引き出せねぇな〜…って、ようやく少し思えて。…それでもまだ未練たらしいけど…少し吹っ切れたわ!」
儚げに笑った夏喜さんは、やっぱり切なくてすごく胸が痛い。