「そーいうつもりじゃないからね…」
苦笑いのあたしに向かってちょっと言い訳がましい言葉を放った。
「あ、いえ…本当の事ですから…」
なんて言っちゃうあたしも、じつは店員失格なのかもしれないけど。
「でもここのコーヒーもホントにうまいし…けんたの事嫌わないでね?」
そう言ってニカって笑顔を見せる。
ドキっとして、あたしは…たぶんだけど顔が真っ赤になってしまってるんじゃないかってくらい心臓がバクバクと脈打っているよう。
噂のスマイルをもろに浴びてしまったんだ。
お店のお客さんの中には、勿論ながら健太さんのファンっぽい社員さんもいるわけで、ちょこちょこ健太さんの名前があがることがあったりもする。
それはたいていちょっとケバめのお姉さんが多くて。
夏喜さんが好きだったゆき乃さんや、健太さんの彼女の美桜さんとは違うタイプの女性が多かった。
こういうちょっとした言葉にも健太さんの魅力は詰まっていて、それにまんまとやられてしまう人は沢山いるんだろうなぁ…と思うんだ。
「嫌いになんて、そんな…」
からかっているつもりなんてないんだろうけど、かっこいいってだけで、健太さんが言うとちょっとだけそういう気持ちになるのも嘘じゃなくって…。
でも、あたしはこうやってたまに健太さんが話しかけてくれることが嬉しくも自慢でもあった。
大学の友達に自慢できるくらいの人だよな〜健太さんって…
なんて現金なことを思っちゃうあたしは酷い奴なのかもしれない。
「夏喜、ここで愚痴ってばっかだったでしょ?」
「え?」
「ゆき乃のこと。黎弥とゆき乃めちゃくちゃラブラブでな、今だにブーブー言って…女々しいんだ、こいつ!」
パコンって健太さんが夏喜さんの頭を叩いて苦笑い。
あたしの前では少しだけ弱みを見せてくれる夏喜さんを、少なからず愛しいと思う。
「え、でも、女はそーいうの言って貰えて嬉しいです」
そう言ったら何だか恥ずかしくって。
夏喜さんも健太さんも今、絶対勘違いしてる!
「え、香澄ちゃん夏喜のこと?…」
ほら、ほら!
そうじゃないのに!
もう健太さんの目は、何故か憐みを含んだ目で…