「送るよ」
それなのに又、あたしの元に戻ってきた健太さんの手は、さっきよりも優しく、今度はあたしの指に絡まった。
どうして?
何でそんなことするの?
美桜さんが違う人を見ているから?
だから健太さんもあたしで埋めようって?
「酒弱いのに飲むから…家どこ?」
呆れた顔なのに、口調はすっごく優しくて…
自分が惨めで情けなくて、物凄い劣等感を感じているのに…
あたしはさっきよりも力強く握られている健太さんの手を離すことが出来なかった。
どうしよう、あたし…
健太さんのことがスキ―――
想いを確信してしまったあたしは出来れば会いたくないと思うのに、どうしてか?健太さんはその日からあたしのバイトが終わる頃になるとお店に顔を出すようになった。
毎日来ていた夏喜さんは、忙しいのか最近見かけなくて…
「夏喜さん元気ですか?」
「あ?」
「…なんでもないです」
「うそうそ!夏喜でしょ?元気じゃねぇの?…知らねぇけんた、別に夏喜のこと気にかけてないし」
ニカって笑う今日の健太さんは少しだけ子供みたい。
どうしてあたしを誘ってくれるの?
そんな疑問を持ちつつも、それを聞くことの出来ない弱いあたし。
それを聞いてしまったら、この関係が終わってしまうんじゃないかって。
確信に触れてしまったらこのゲームかもしれない関係でさえ、壊れてしまうかもしれないから。
あたしなんかと一緒にいるから、人気者の健太さんのファンらしき社員さん達は、きっとあたしを良く思っていない。
たかが学生バイトのあたしと一緒にいる健太さんを不思議にさえ思っているに違いない。
半分ぐらい、見張られているような気もするし…
それを確信づけるかのように、カフェ;はぴねすには女性社員さんのお客様が増えたのは事実だった。
それはやっぱり、あたし達を監視しているみたいで、少しだけ居心地が悪かった。