それなのに…
「何食いたい?」
二人揃ってお店を出た所で健太さんがそう聞くも、目の前にたたずむ夏喜さんの姿を見つける。
珍しく一人の夏喜さん。
視線の先には…
「今日は車?」
「そ!今日帰り行くから…」
ゆき乃さん達、ラブラブカップルがいて…
小さく溜息をつく夏喜さんの後ろ姿は切なすぎて何度見ても胸が痛かった。
「気になる?」
そんなあたしを覗き込むように耳元で小さく呟く健太さん。
やっぱりからかわれてるとしか思えなくて。
「早く素敵な人が見つかるといいなって思うだけです」
「香澄ちゃんさー、夏喜の心配ばっかしてるけどけんたのことはちっとも興味ないよねぇ〜」
軽いノリな健太さんの言葉があたしに届いた。
でも視線を移すと心なしか真剣な表情で、そのギャップにあたしはドキドキするわけで。
「…あの人と付き合ってるのに、どうしてあたしの事誘うんですか?」
勇気を出して言ったその言葉は、蚊の鳴くような小さな声だったのにも関わらず、健太さんの耳には届いたみたいで、でもその答えは超疑問系であたしに返ってきた。
「…俺、誰とも付き合ってねぇけど…誰のこと言ってんの?」
「え、誰ってあの…――美桜さん…って人…」
一瞬シーンとなったあたし達、次の瞬間、健太さんがお腹を抱えて笑いだした。
泣きそうだったあたしの涙腺は一気に止まって、目を大きくして健太さんの言葉を待つ。
「ちょ、待って!美桜ってあの、美桜っ?」
「だってよく二人で来てたじゃないですか?え、違うんですか?」
もはや違うとしか言われないだろうその続きが早く聞きたいような、聞きたくないようなそんな感覚で。
「美桜は、陸さんの女!ほらあれ見てよ!」
そう言う健太さんの指差す方向には、美桜さんと長身な男性が仲良く話している。
その姿は本当に“お似合い”だった。
お互いに信頼しあっていて、愛し合っていて…そんな想いがあたしにも伝わってくる。
「付き合ってるんですか?」
「そう!来年結婚するんだって」
「そう、なんですか」
「香澄ちゃんさー、そういう自分の思い込みが激しいとこ、美桜にそっくりだな」