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「あの、すいませんあたしのせいで…」


気まずいながらもそう呟くと、キョトンとした顔で田崎さんはあたしを見ていて…

むしろ「何言ってんだ?」って顔で、その顔の如く…


「何の話?」


そんな言葉が飛んできた。


「あたし、専務の愛人じゃないんですけど…」


そう言うと、「あーあーあー」って、手を顔の前で左右に振って笑った。


「俺全部知ってるから安心して。ハルさんが室長の娘さんって事も、専務の愛人じゃないって事も。暇人は噂好きだからいらねぇこと言われるかもしれないけど、そーいうーのも一経験だと思ってさ、乗り切ってこう!…まぁ、何かあったら守るから」


トクン…

なんだ、この人全部知ってたんだ。

入社する時に明らかに“コネ”って伏せておくようにって念を押して言われたから、言うに言えない状況だったからちょっとしんどかったけど。

この人それちゃんと知ってて分かったうえで、一緒にいてくれてんだ。

そう思うと、沈んでいた心が一気に晴れた気がする。


「ありがとうございます」

「うん。見てる人はちゃんと見てるから!俺らの同期やその周りはちゃんとハルさんのこと受け入れてくれるはずだよ」


そう言って連れて行かれたのが、経理課のフロアだった。

経理課と言ってもその中で又、更に色々と分かれていて、請求業務だったり、伝票作伝だったり、給料計算だったり…沢山の内容が溢れかえっていた。


「おつかれーっす」

「おう、敬浩!と、ハルちゃんかな?」

「お前馴れ馴れしいな、初対面なんに…」


そう言われてもニッコリ笑ってあたしに手を差し出してくれるのは、黒沢さんって全体的に大人っぽい人だった。

目の奥がとても優しそうで、でも仕事には厳しそうな人に見えた。


「初めまして、このゴリ沢…あ、間違えた!ついうっかり…あまりに似てたから…」


なんて言って黒沢さんの後ろから茶髪の元気な女性が出てきて、黒沢さんとゴリラを混合させているみたいなコントを披露しつつも…


「ゆき乃です。宜しくね!」


そう、爽やかに挨拶してくれた。

その先輩に当たる、ふんわり優しそうな美桜さんと、小柄で可愛らしい莉子さんも紹介された。