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「敬浩さん、俺も!俺も!」


そう言ってグレーのスーツを靡かせてきたその人をまるで無視の田崎さん。


「…いんですか?」


そう聞くあたしに「いいから、いいから」って冷たくあしらうも、側にいたゆき乃さんが簡単に田崎さんの肩に腕を乗せて「コラッ」って言った。

ほんの一瞬田崎さんがピクンって反応した気がして…

それは何ていうか、ゆき乃さんが触れたからっていうか。

ゆき乃さんの息遣いがすごく近かったから、とかそういう感じに取れて。

これってもしかして…

もしかしなくても…


好きなの?


思い出すのは田崎さんの言葉。

“俺の本命、俺以外の奴見てんの”

って事は…――

ゆき乃さんは田崎さんではないってことだよな。

それはそれで有難いけど…

ちょっと切ないなー。

ハルがいるのに、田崎さん。


――――――――…


「で、何で俺よ?」

「いや、一番話しかけやすかったっていうか…」

「まぁ、そうだな」


社内カフェのすぐ側にある外のベンチに座るあたしの隣には、自己紹介で田崎さんに相手にされてなかった片岡直人さんこと、直ちゃんがいて。

勿論ながらその後ちゃんと自己紹介をした時の雰囲気と感覚で喋りやすかったから、あたしはつい直ちゃんを呼び出してしまったんだ。

呼び出しの理由に「俺に興味がある?」って聞かれたから「ないです」ってキッパリ言ったらシュンとしてしまった。

でもあたしは真実が聞きたくてウズウズしているわけで。


「あの、ゆき乃さんの好きな人って…誰ですか?」


単刀直入に言うも、当たり前に顔をしかめる直ちゃん。

まぁ、普通の神経ではそうだろうな。


「え、ハルちゃんて…そっち系?」

「違います!田崎さん…ってゆき乃さんの事好きなんじゃないかな?って」


とんだ勘違いな直ちゃんにそう言うと、ふざけた顔が真剣になった。

あ、ちょっとカッコイイかも。

そう思ったのは内緒にしておこうっと!


「敬浩さんがゆき乃を?」


繰り返すようにそう呟く直ちゃんにあたしは頷いた。


「はい!でも田崎さんの本命って他に好きな人がいるそうなんです」

「…うん」

「出来ればゆき乃さんとその人がうまくいってくれたらいいな〜って思って」