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「憂鬱…」

「なにが?」

「えっ?」


ボケーっと机に寝そべっていると、上から田崎さんの声が聞こえて…苦笑い。

でも本当にあたし仕事なくて超ひまだもん!

あれから一ヶ月近くたっているのに。

電話の取次ぎくらい出来るし、コピーやお茶くみぐらいなら出来るのになぁ。


「暇だろ?」

「…はい」

「よし、んじゃちょっと付き合え」


そう言われ腕を引っ張られるがまま、社内にある大きな庭に連れて行かれた。

触れられている腕を離して欲しくないな〜なんて甘いことを思いながらも、簡単に離された腕をぼんやり眺めていた。

でも次の瞬間聞こえたのは…

あたしの耳元で話す田崎さんの甘い声。


「あいつら、何話してると思う?」


そう言う視線の先には、美桜さんと哲也さんがいて。

ベンチに座って楽しそうに話している。

でも、その声までは聞こえないし…

何を話しているかなんて分かる訳ない。

だから―――


「何って、そんな事分からないですよ」


そう答えたあたしにニヤって田崎さんの笑いが零れた。


「アホだなぁ!表情で読めって言ってんだよ!声も聞こえねぇ…特にジェスチャーがあるわけでもねぇ。それなら表情見てどんな話してるか悟ってみろ!」


む…無理なんだけど!


「俺はあいつらをよく知ってるから、何話してっかくらい簡単に分かるぞ」

「え、ほんとに?」


思わず敬語なしで喋ってしまったら、不敵にニヤって田崎さんが笑う。


「お前さ、敬語とかちゃんと使えねぇと社会出て恥かくぞ?これから俺にタメ語で喋ったらペナルティ貰うから!」

「な!…何ですかペナルティって…」


ちょっと期待しながら見上げたあたしの唇をペロって田崎さんが舐めた。

なななななっ…舐めた!

一歩後ずさりしたものの心臓はバクバクしていて、心なしか顔が笑いそうなあたしって。


「ま、せーぜー気をつけろよ」

「…はい」


なんてシュンってしてるフリしても、内心超喜んでいるあたし。

そんなあたしを見て田崎さんは屈託なく笑ったんだ。