「で、読めるか?」
「読めません」
「よく見とけ。あれは、ただのじゃれ合いだ。美桜は哲也のこと気に入ってる!でも別に恋愛感情じゃねぇぞ。ケンチと何かあったんかもしれねぇな、あの様子だと。だから哲也が美桜のこと元気付けてるってそんな感じ」
自信満々にそう田崎さんが言ったら、今度は美桜さんの彼氏のケンチさんと同じ部署の女…名前は忘れたけど…が、現れて。
っていうか、その女が美桜さん達のことをガン見していて。
ちょっと雲行き怪しい感じなのかな?
「あれは…」
「サチコ。ケンチの元カノ」
「えっ?元カノ?」
「そう。今の完全に見てたって顔したなサチコ。どう思ったんだろ?」
何だか少し楽しそうな田崎さん。
こんな人間観察に一体何の意味があるんだろうか?
仕事の一つも教えてくれない癖に、この表情の見分け方で一体何の特があるんだろう?
あたしには田崎さんの考えてることが全く分からない。
そもそも大人の考えって…難しい。
「どうって元カノだからって別に関係ないんじゃないですか?仕事ですし…」
そう言ったあたしの腰にグイって腕を回されて急に距離が縮まった。
「そう?そう思う?」
わざとか?ってくらいにスキンシップで攻めてくる田崎さんに、完全ノックアウト状態のあたし。
もうタメ語で喋っちゃおうかな〜なんて思っちゃう悪い子で。
「お…も、…います」
何とか堪えて田崎さんを見上げた。
「サチコの顔よく見ろよ…。ありゃ絶対ケンチにいらんこと吹き込むぜ?…一波乱起こるかもしれねぇな」
そう田崎さんが言った言葉は現実味を帯びていて…
それから数日後、あたしは呆然と立ち尽くしている美桜さんを発見した。
声を掛けようかどうしようか迷っていたら、あたしの横を擦り抜けるように莉子さんが駆け寄って美桜さんの視線を独占する。
「美桜ちゃん?どうしたの?」
「何でもない」
死んだような声でそう言う美桜さんは表情も死んだようで。
「何でもないって…泣いてるじゃん!健一郎くんと何かあったの?」
莉子さんが心配そうに美桜さんを死角に連れていったけど、美桜さんは何も言わない。
まるで莉子さんの声が聞こえていないみたいで。