人間は極限ショック状態になると…あんな風に感情がなくなってしまうものなのかな?ってほんの少し思った。
美桜さんはケンチさんの事が大好きだから、きっと悩んでいて。
みんなが憧れるほのぼのカップルって軽く思っていたけど、本人達が抱えている悩みなんて他人には計り知れない。
幸せそうな表情の裏の悲しみをちゃんと見なくちゃいけないんだって…そう思った。
これが、田崎さんの教えたかった事なのかもって、あたしは今日初めて分かった気がする。
翌日。
社内カフェ;はぴねすでお昼を取っていると莉子さんが入ってきた。
またしても声を掛け損ねたあたしは静かに存在を消すかの如く耳を傾けていた。
カランと莉子さんに続いて入ってきたのは彼氏の啓司さん。
「莉子までそんな悲しい顔しないでよ」
高音が心地よくてあたしはそっと目を閉じた。
「だって美桜ちゃんにしてあげられる事がなくって…一人で全部抱え込んじゃうから。あたし頼りないのかなって」
莉子さんの優しい声は涙声で震えていて。
カタンって音がしたから、きっと啓司さんが莉子さんを抱きしめたのかな…って思った。
「違うよ!美桜さんは莉子に心配かけたくないから言わないだけだって。莉子が頼りないとかそんなんじゃないって…元気だしてよ」
「それでもあたし、美桜ちゃんと一番分かり合ってるって…そう思ってるの」
「自分に置き換えて考えてみて。莉子が本当に悩んでる時、美桜さんに全部相談した?」
「…言えなかった。言えたこともあるけど…心配かけたくないし巻き込みたくないって」
「美桜さんも同じ気持ち抱えてると思うよ!お互いを思い合ってこその沈黙じゃないの?きっとね、美桜さんから話してくれるって…一番の仲良しなんでしょ?」
「…うん」
とっても胸が痛かった。
こんなざわめきの中で、あの二人の会話を聞いているのはきっとあたしだけ。
友情にだって色々あるんだな…ってことを知った。
誰かに相談するのも、その人のことを考えて止めたり…なんて、そんなことあたしには考えもつかなかったのに。
そんな友情も…いいな…って思わずにはいられない!