それからあたしは田崎さんの言われた通り、人の表情を読むようになった。
言葉を発する前に、この人は何が言いたいんだろう?って考えて。
それが当たってたりすると妙に嬉しくて。
「哲也くん恋してるでしょ?」
「はぁ?」
あからさまに大きな声を出して眉間にシワを寄せる哲也くん。
田崎さんは忙しいらしくて、あたしをほったらかし気味で「研修」って哲也くんの部署に置いていかれて二日がたっていた。
ここでもやっぱりあたしがする仕事はなくって、今や日課となった人間観察で哲也くんの真相心理を読もうと試みた。
想像通り真っ赤な顔になった哲也くんはPC画面がバグっていて…「動揺?」って言ったあたしに舌打ちを返した。
「邪魔すんじゃねぇぞ」
ゾゾゾゾって低い声を出されたけど、図星な哲也くんが可愛くてあたしは笑いが止まらない!
「ねぇ〜どこの部署の人?」
「どこでもいいだろがっ!」
そう言ってからハッとした顔で振り返った哲也くんに、満面の笑みを送る。
「そっか、ホテルHappiness人気ナンバー1の土田哲也が恋かぁ!その幸せなエンジェルは一体どこにいるんだろ――!…哲也くんって甘えん坊だから年上?」
そう言うと、更に真っ赤になって。
もうそろそろ止めないと本気でどつかれるんじゃないかって思った。
最近の哲也くんを見ているとどうにも喜怒哀楽が激しくって。
たぶん元々気性の激しい人なんだろうけど、それ以上に激しくて。
ご機嫌な日がだいぶ続いていた。
それは、PCを見ながらもその先に誰かを思い浮かべているような、
そんな感覚で。
「あ――ねぇそれどこで買ったの?ハルも食べたい!それ、欲しいなぁ」
デスクの右端に置いてあった小さなチョコマフィンを指差してそう聞いた。
そもそも、甘いものなんて絶対に食べなさそうな哲也くんのデスクには、そのマフィンは不似合い。
でも何でかそれ自体が大事そうにも見える。
ダメ元で聞いたあたしに過剰に反応したのはやっぱり哲也くんで。
「ちょ、これはやめろ!これだけは触るなよ」
慌てて鞄にしまわれてしまった。
キョトンとしたあたしに向かって言葉を発するのも哲也くんで。