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「いや、これはその何ていうか…お守りみたいなもん!願掛けっつーか、いいっしょ!俺だって好きな女ぐらいいるわっ!」


逆ギレされた。

でも、分かったのは…哲也くんが好きな子はきっと、この不似合いなチョコマフィンが似合う可愛い子なんだって。

物凄く興味があるけど、これ以上踏み込むのはやめにしよっと。

そう思った矢先、ドアが開いて田崎さんが顔を出した。


「ハルさん、研修終わりな」


そう言われて。

単に迎えに来てくれただけと思っていたあたし。

プランってしてる真っ黒くて長い手に触りたいな〜って思って見ていたあたしは、田崎さんの指にあの指輪がついてない事に気づいた!

え…いつから?

最近ちょっと浮かれ気味でちゃんと意識してなかったかも。

なに?

どーゆうこと…?


え、本命…そういや本命ってゆき乃さんだよな。

でもゆき乃さんは…――


視線の先には黒沢さんと仲良く並んで歩いてる幸せそうなゆき乃さん。

どう見たって、ラブラブだよね。

人間観察を開始してからというもの、他にも沢山の人を見ていたせいか、肝心な所を見ていなかった事に気づいた。

一番観察しなきゃいけない所をすっかり忘れていたなんて…

なんてバカヤロウ!なんだ。


啓司さんと莉子さんは大丈夫そうで。

美桜さんもケンチさんとうまくいって。

美桜さんと莉子さんの友情もバッチリで。

直ちゃんは相変わらずサボってて。

哲也くんは恋に落ちてて…

大好きな田崎さんの恋敵〜!

マジいつの間にかゆき乃さんと黒沢さんくっついてるし。

いつだよ、おいっ!

いやでも、元々仲が良かったから付き合ってるように見えるだけで、実際はただのお友達かもしれないし。

そうならまだ田崎さんにだってチャンスはあるはず!

こんなに男前なんだもん!

揺れない訳ない!


…って何応援しちゃってんの、あたし。

自分の好きな人の恋愛応援なんかしちゃったら、自分が傷つくだけじゃん!

そんなの分かってて自ら応援するバカどこにいるんだよっ!

そう思うのに…――


「あの、田崎さん…」

「ん〜?」

「田崎さんの本命って、その…」


ゆき乃さんと黒沢さんの方をチラチラ見ながらそう言うあたしをジッと見る田崎さんは、いつも通り口端を少しだけあげて笑った。