「あの、大きい声では言えないんですけど…承認も今日中だったら大丈夫なんですよ!ぶっちゃけ明日の午前中まで平気でして。ただ色々と煩く言う人もいたり、本当に遅い人もいたりするんで、しつこいようで申し訳ないんですが、催促の電話とかしちゃったりで、すいません…」
彼女がそう言った瞬間、何かが弾けた気がした。
一目彼女を見た瞬間に…「まずい」と思ったのは俺の直感で。
会ったこともなかったから、電話の応対だけで判断する所だったけど…
そもそもそれも色々あったんだなぁ…。
「うん、いいっすよ!俺も今日来てよかった!汐莉さんに会えてよかった!」
そう笑ったら、又ビクって肩が動いて恥ずかしそうな顔を見せてくれた。
それはたぶん、この島の奴らには見せない顔なんじゃないかなー?って思ったのと
単純に「可愛いな」って思いの半々だった。
「機嫌いいっすね?」
「あ?別に」
デスクに戻ると直人がいた。
俺の顔を見るなりそう笑って、超腹が立った。
なんなんだよ、お前!
見透かしたような顔しやがって!
「お前そんなんだからモテねぇーんだぞ」
そう言ったら、すげぇ顔で俺のデスクを叩いていなくなった。
ケラケラって渇いた俺の笑いが響いたんだ。
でもそれ以降、なんだかんだで仕事が忙しかった俺は、すっかり汐莉さんのことも忘れて…
まぁ忘れてたわけじゃないけど…
そこまで気が回らなかった。
上司は俺をいい様に使っていて、それを分かっていながらも取引先やらの意見も聞いて、板ばさみ状態の日々が続いた。
毎日打ち合わせと扮した会議で、一つの会議が終わるとすぐに又もう一つの会議に入らなきゃいけないわけで…
これから入る会議は、さも最悪な会議だった。
廊下で大きく深呼吸をした俺は、「よし」そう気合を入れて笑顔で会議室の扉を開け放った。
「佐藤です、失礼しますっ!」
「…………」
―――――――――…
「だぁ〜〜!」
デスクに寝そべってうな垂れてから早、30分。
ようやく仕事がひと段落ついて、溜まりに溜まった疲れとか苛々とか一気に解消したいと思うけど、体が思うこと動かねぇ…
「はい、ヒーコー」
ブラックコーヒーを持ってきてくれたゆき乃。
今時“ヒーコー”は言わないでしょ。
ズズズズ…ってコーヒーを啜って又、小さく溜息をついた。