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「お疲れ?」

「見ての通りよ〜」

「ねぇそういやさ、篤志って来週の飲み会の幹事だよね?場所もう決まったの?」


軽快なゆき乃の声に、余計に疲れがどっとでた。


「やっべぇ、忘れてた…最悪だ…。俺超ついてねぇ…んん―――」


週末に控えた飲み会は一応俺ら営業部主催の飲み会で、場所が隣にあるゆき乃達がいる経理課とよく合同で行われる。

その他にも敬浩やケンチや哲也の他部署の人達も適当に声をかけて参加してるわけで…。

とにかく飲み会の存在自体をすっかり忘れてた俺は、たまたま通りかかった直人に声をかけた。


「直人、週末の店どっか押さえてきて?」

「え?俺ぇ―――?」


自分の鼻の頭を指差してそう嘆く直人。

でも俺の隣にいたゆき乃に気づくと「仕方ないなぁ〜」なんて言ってる。

ただその顔は嬉しそうで。

ゆき乃が良平を好きだったのは一目瞭然なんだけど、それと合わせるようにこの直人はそんなゆき乃を好きで…。

晴れてゆき乃と良平がカップルになった今もまだその想いを持ち続けている。

悲しい男だね!


「ゆき乃俺と一緒に店巡りしない?」

「いいよ!」


本人だけが気づいてないという…悲しい現実。

ま、俺にはどうでもいいんだけど!

そう思った俺の頭にふと浮かんだのは汐莉さんで。

直人と一緒にフロアを出て行こうとしたゆき乃の腕を強引に掴んだ。


「なんだい?」

「あのさっ…いや…なんつーかっ、その…」


無駄に照れてる俺を不審に見るゆき乃。

俺は掴んでいたゆき乃の腕をパッと離してニカっと笑った。

同じようにニカっと俺に笑顔を向けるゆき乃に俺の気持ちは全く伝わるはずもなく…


「篤志意味分かんねぇ…」


毒を吐いた。


「いや、だからさっ!…そのたまにはっつーか、お礼の意味もこめて…よ、呼びたいんだけど…」

「誰を?」

「……汐莉さん?」


ボソっと超小さい声で言ったけどゆき乃にはしっかりと届いていたようで「あぁ!」って笑う。


「汐莉ね、汐莉!うん、誘ってみる!」

「うん、頼むよ。…あ!会費は俺持ちで…」


ボソボソ言う俺の背中をバシンって叩くゆき乃はニンマリ笑顔で、超腹立つけど、それ以上に汐莉さんと一度話してみたかったんだ。