ブレーカーをつけても停電は直らなくて。
ここら一体真っ暗闇に包まれている。
それでもなお、激しく降り続く雨音と、まだ鳴っている雷。
今夜はとてもじゃないけど一人じゃ無理だ。
だけどなっちゃんと同じ部屋で眠るなら、そうなってもおかしくなくて。
大きなキャンドルに火をつけたらようやくなっちゃんの顔が見えたんだ。
水を一口飲んで小さく息を吐き出す私を見ているなっちゃん。
「することねぇなー」
ドライヤーが使えないからさっきからずっとタオルドライを繰り返す私は、次いつなっちゃんに触れられるのかドキドキで。
そんな私を前にふわぁーってあくびを繰り返すなっちゃん。
私がド緊張しているのに、それが全くなさそうに見えるなっちゃんがちょっとだけ憎く思えてきた。
だから―――――
「なっちゃん…」
「んー?」
「したことあるの?」
「…え」
案の定、私の質問に視線を止めて顔の動きも止めた。
主語は言ってないけどこれで通じてるって思うわけで。
「ないよ」
嘘くさい言葉が飛んできた。
「ほんとに?」
「うん、ない」
「でも何か慣れてる感じだったから」
「ないって。マジで!心臓バクバクだよ今もずっと」
「今、も…?」
「そう。確かめる?」
キャンドルの灯りに照らされたなっちゃんは何だかいつもより色っぽくて、ドキドキする。
スっと腕を伸ばして私の手首を掴むとそれをそのまま自分の胸に宛てた。
トクトク…って動いているものかと思っていたなっちゃんの心音は、ドキドキドキドキ早鐘を打っていて。
「ね…早いでしょ?」
そう言ってちょっとだけ困った顔をされた。
だけど握られたその手を、何故かなっちゃんは離してくれなくて。
外は大雨と今だ鳴り響いてる雷のせいで、この手を離して欲しいとは思えなかった。
かろうじてなっちゃんが一緒にいるからそれほど怖い思いはないものの、空がピカッと光る度にビクッと肩を上げて反応してしまうんだ。
「ゆき乃怖い?」
「んーん。平気」
「ほんとに?」
「…まぁ少しは…でもなっちゃんがいるから大丈夫かな」
「そっか」
そう言って黙り込むなっちゃん。
キャンドル越しに見つめる瞳は何だか少し揺れていて、次になっちゃんが口を開いた瞬間、また空がピカッと光ってその1秒後に大きな音が空に響いたんだ。
だからなっちゃんが何て言ったのか分からなくて。
「ななななにっ!?なんてっ!?」
ギュッとなっちゃんの腕を握り締める私にもう一度今度はハッキリとなっちゃんが言葉を繋げた。
「あのさ、キスしてもいい?」
「……え」
「だめ?」
「え、だめっていうか」
「キス、させて……」
いいよ!なんて言ってないのに座ったままなっちゃんは私の方に一歩近づいて……そっと頬に手を添えるとそのまま綺麗な顔を近づけた―――――