高嶺の花1


【side 勇征】


昔から出来が悪かった。要領よく生きてる奴が羨ましいって。

俺も要領よく世渡りできたらどんなに楽なのかって?


「よー勇征!女できた?」
「…瀬口さん、そーいうのパワハラって言うんですよ。」


目を細めてバーのカウンターに座る会社の先輩瀬口さん。人懐っこい笑顔と適当な性格は何故かみんなの人気者で、常にこの人の周りには人が集まってくる。

悔しいけど憧れの存在。

毎日ケアミスばっか起こしてて結構凹んでいたんだ。

もう俺、この仕事向いてねぇって思って、辞めようかどうしようか本気で悩んでいた時だったんだ。

彼女、…―――雪乃さんに出逢ったのは。

それは、社内にあるカフェで一息ついてた時の事。



「雪乃ー!今夜合コンどうする!?」


隣で電話をかけている女性に対して廊下の向こう側から叫んだそれに対して、彼女は一瞬顔を歪ませた後、「ごめんパスー!!」そう叫び返した。

すげぇな。合コンとかって行った事ないけど、今でも普通に開催されてんだ〜なんて思った。


「あー聞こえた。だって合コンに来る奴なんてろくな男じゃない。ヤリたいのが見え見えなナルシストと、別に可愛くもないのに、ぶりっ子するヤリたいブスの集まりでしょ。……いいの、こんなのハルしか聞こえてないし。」


どうやら電話の相手はきっと素の彼女を知っている友人って所だろうか。


「まぁ否定はしないけど、私は無理。仕事だったら金貰ってるからしっかり責任もってやるけどさ、プライベートは巻き込まないでって思う。……楽しくもない相手と食べるご飯なんて美味しくないし、酒もまずい。ハル、私はねご飯もお酒も美味しくいただきたいの!女って何故か群れを作って生きてるじゃない?そこに個性はないのか?って。お前の意見はないのか?って思うの。みんなと同じことしてるのがいいって思うなら別に止めないけど、私には無理。自分の意見も言えないような人間にはなりたくないよ。だから行かない。興味ない。」


窓の方を向いている彼女は、顔も見えなくて。いつもうじうじしている俺に喝が入ったように思えたんだ。勝手だけど。

女の人ってふわふわしててやんわりなイメージだったけど、こんなにかっこいい女がいたんだって。だから顔が見たくて、反対側に回ろうとしたら、スッと席を立って歩いて行ってしまった。

だけど追いかけるなんてできなくて。同じ会社ならきっとまた逢えるって。

二度目に逢えたら運命だって…―――勝手に思い込んでいたんだ。

唯一知ってるのは「雪乃」って名前だけで。

その日以来俺は、雪乃さんを探すようになった。