一言も会話を交わすことなくひたすら書類をチェックする。やっと印刷会社へPDFを送り終えた時にはとっくにディナーの時間も終わり。
クラブはこっからさほど遠くはないものの、着替えてメイクも直してってすると、一時間弱はかかる。
あーでもバーテン。会いたい。スマホのカメラロールに入ったその姿は、友人ハルが激写したもので、ちょっと遠目だけど、悪くない。筋肉ガッツリで、確か背も高いって。声も素敵で、笑うと目が細くて優しくてかっこいい。話も面白いって言ってたし、絶対絶対運命の相手だ!って意気込んでいたのに。
パーティーには来るって情報も手に入れていたのに、このまま諦めるなんてやっぱりできない!
「あの、すいませんでした。もしよかったらご飯とかどうですか?勿論僕が奢ります!せめてもの御礼に、」
「結構!私約束あるから行くわ!」
「あの、じゃあ今度ゆっくりご飯行かせてください!」
「いらないわよ。そんな事よりミスらない努力をしてよね!」
残念そうな顔で「ですよね。」なんて苦笑い。一分一秒も無駄にできない私は八木の肩にポンと手をついて「おつかれ!」そう言うと、早歩きでフロアを出て全力疾走。悪いけどポンコツに構ってる暇は一秒足りともねぇぞ!
駅のトイレで着替えてメイクを直し終えてスマホを見る。
「えっ!?来てない!?」
ハルから来ていたLINEには、バーテンがまだ来てないって事。な、なんだぁ。でも今日はもう来ないってこと!?この時間で来てないとか、もう来ないよね?え、えええ。
とりあえずハルに電話をかける。
握りしめていたのか、ワンコールで「もしもーし!」元気よく電話に出た。
「ハル!バーテンなんで来てないの?」
「あーそれがなんか急用!ってだけで、でももしかしたら来れるかも?遅くなるけど、みたいな感じたみたいよ。雪乃さんと同じで。」
「マジかー!とりあえず私電車乗ったからあと10分ぐらいで行けそう。ハル帰るなよ?」
「うん、勿論待ってるよー!早く来てねぇ!」
ピッて話の途中で切るとポカリを飲む。はぁー。ダルい。
たまに自分なにやってんだろ、なんて寂しい気持ちになる。
今もほんの少しだけそんな虚しさが私の中に巻き起こっているなんて。