「御機嫌?」
デスクに向かって仕事をしている私の横、澤くんがニッコリ微笑んでアーモンドチョコの箱を置く。
「雪乃ちゃん、好きだよね?あげる。」
「ありがと、澤くん。」
「…今日なんかメイクもいつもより可愛いね。」
「え、ほんと?」
ユーセイの為にマツエクを10本だけ増やしたけど、先に澤くんに気づかれちゃった。ま、いいか。
「爪もいつも可愛いよね、雪乃ちゃん。」
そう言いながらスマートに澤くんが私の手を軽く摘む。だけどその瞬間、斜め前のポンコツ八木が「あ、の、あの!!」何故か物凄い形相でこっちを見ている。
「…なに?」
「いえ、あの、ゆ、…郵便局行ってきます!」
勢いよく立ち上がってわざわざそんな事を言うから。「いや勝手にどーぞ。」くるりと手をひるがえして入口の方向に指先を向けると、苦笑いで歩いて行った。
「変な奴だな、相変わらず。」
ただ、髪型は別として、あの後ろ姿は悪くない。スーツ着てるからよくは分かんないけど、何となく筋肉の付き方がユーセイに似て見えた。
…って、気持ち悪い!八木はただの贅肉。ユーセイは筋肉だよね。うん。
「…もしかして、妬いた?あ、そーいうこと?」
「澤くん、ないない。…私彼氏できたから。あんなポンコツとは似ても似つかない素敵な人。」
「そりゃ黎弥が悲しむな。」
「…また御冗談を。」
ポンって私の頭を優しく撫でると澤くんは自席に戻った。
その3秒後、ユーセイからLINE電話。緩む頬にスッと席を立って私は右にスライドしてスマホを耳に当てる。
「ユーセイ?」
【…すいません、電話なんか。急に声がききたくなっちゃって、】
「…ふふ、可愛い。平気、夏はわりと暇なのうちの会社。だからいつでも電話して。」
【雪乃さん、愛してる。】
「…私も。ユーセイに早く逢いたい。今日も行ってもいいのかな?」
【勿論。毎日来て。毎日逢いたい。】
意外と甘えん坊なんだなぁ、ユーセイって。カフェで珈琲を買ってデスクに戻ると、八木が真剣な顔で仕事をしていた。