「ハル、ねぇユーセイってバーテン以外何してるか知ってる?あと、ユーセイの苗字ってなんていうの?」
運命の相手、バーテンユーセイと付き合えて舞い上がっていた自分が、ようやく冷静になれたんだろうか。今更ながら何も知らないこの関係をおかしく思えた。
LINEに打ったハルへのメッセージを送るのにこんなにも躊躇うなんて。
不意になった内線を取ると八木宛で。
「八木、庶務から内線。」
「あ、すいません。お電話代わりました八木です。」
声が似てるのは気のせいだよね?電話を切った八木は「名刺ができたみたいで、取りに行ってきます。」…わざわざ私に報告すると、無言で八木を見つめる私に、「どうかしました?雪乃さん…。」――――確かに私を「雪乃」と呼んだんだ。
今までただの一度も呼ばれたことだって、呼ばせたことだってないのに。
今ここで私が「ユーセイ」そう呼んだなら、八木は振り返るんだろうか?
…怖くてとてもじゃないけど呼べなかった。
八木が庶務から戻ってくる前に外回りの予定をこぎつけて私は荷物を持つと、ホワイトボードに「N.R」と書いて会社を出た。
向かうは、ハルの会社。
超仕事中に呼び出したくせに、ハルはちゃんと出てきてくれて。
「え、雪乃さんどうしたの!?」
雨雲背負った私を見て困惑した声を出したハルに「しょぼん。」と小さく呟いた。
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「最低!八木、最低!雪乃さんのこと騙して一緒にいる気だったの!?」
「でも私も何も聞いてなかったのは確かで。」
「そんなの、八木が言うべきだよ!」
「でも分かんないじゃない。まだユーセイと八木が同じ人間だって決まった訳じゃないし。」
「絶対同じだよ!!間違いない!!」
「ハル、いいから黙れや。」
バンって机を殴りつけてそう言うと、ハルがビクッと肩を竦めた。泣きそうな目で「うう。」って、いやもはや泣いてやがる。
勘弁してよ、泣きたいの私。