夜の闇は簡単に私たちをのみこんでいく。
「なんでそんな顔?」
待ち合わせ場所に着いた夏喜に、開口一番そんな言葉を浴びせられた。こんな風に夏喜と会う事も止めようってそう思ってたのに、つい数時間前までは。
ホテルの最上階にある夜景の綺麗なレストランでシャンパンを飲みながら思う。
いつもは美味しいはずのこの食事も、今日に限ってなんでかあんまり喉を通ってくれない。
「なっちゃん、」
「なに?別れ話なら聞かないよ。」
「……だってなっちゃん他にも女いるでしょ?」
「それはお互い様じゃん。雪乃だって、…ユーセイだっけ?」
「やめて!その名前は今、」
聞きたくない―――とは言えなくて。
コトっとナイフとフォークを置くと、夏喜はシャンパンを一気に喉の奥に流し込んだ。
大好きな夏喜の顔なのに、どうしても引っ掛かって集中できない。別れ話すら、切り出せない。
「なんかあったんだ、あいつと。」
ダメだ。こんなんじゃダメだ。
「なっちゃんごめん、出直したい。」
俯いてる瞳から涙すら零れそうで。今、私を待っててくれてるユーセイが、あの八木と同じ人間なのかも…って思うと、どーしていいのか分からない。
「分かった、んじゃ出ようぜ。んで雪乃のここにいるもん、全部とっぱらってやる、俺が。」
立ち上がった夏喜は私の手を引いてお会計を済ませた。外に出るなり夏喜の手が伸びてくる。私の前で手の平を見せていて。
「え?」
「スマホ貸せよ。」
「……でも、」
「大丈夫だって。何があっても俺は雪乃の味方だから。」
ぶっきらぼうな夏喜がそんな言葉をくれるなんて思いもせず。単純にその言葉が嬉しくて私は夏喜にスマホを預けた。自分で連絡する勇気もないし。