夏喜の本音1


ちょっと恋愛がうまくいかなかったからって、仕事やプライベートに支障が出るような弱い女になんて絶対になりたくない。

私はそんなに弱くなんて、ない―――



「保科、これどうした?」
「…はい?」
「お前らしくないぞ、こんなケアミス…。」


部長が指さしているのはまだ入稿前の原稿で、残念なことに途中から字体が変わっていて…


「えっ!?なにこれっ!?」


こんなミスあり得ない。こんな八木みたいなミス…。



「すみません。すぐに直します。」


肩を竦めた私に視線を飛ばすであろう八木が見たくなくて、朝一でデスクに書類を積んで壁を作ったんだった。

あと何回寝たら憂鬱じゃない日々を迎えられるのだろうか。


「雪乃ちゃん、これどうしたの?」


澤くんが微妙な顔で私と八木の閉ざされた空間を見つめた。勿論ながらどんなに避けても顔を合わせないわけにはいかない。だから視線が会わないように…―――あの日から一週間過ぎた今も、一度も八木と目を合わせていないなんて。


「ごめんそれ、崩さないで。」
「…崩さないけど、避けてるの?八木のこと。」


耳元でこっそり聞いてくれたのたぶん、澤くんの優しさだって思う。こーいう事気づかないでデカい声を出すような男は好きじゃない。


「…そんなんじゃないわよ。」


そんな簡単なことじゃない。人には言えないよ、こんな馬鹿みたいな事。八木がどうとか、ユーセイがどうとか、今は何も考えたくないの。

だけど、仕事に打ち込もうとすればする程、私は残念なミスが続いていた。