夏喜の本音3


キョトンとした顔で夏喜を見つめると、煙草を灰皿に置いて身体を反転させた。横になった状態でこちらを真っ直ぐに見つめる夏喜はかっこいい。単純にかっこいい。


「雪乃は、周りが見えてなさすぎ。確かに自分の感情はみんな持ってる。でも真意なんて本人しかわかんねぇだろ。俺にしても、アイツにしても…。」


この人は味方なのか、敵なのか分からない。「アイツ」なんてユーセイの事しかなくて。トンっと私の胸元に手を置く夏喜が静かに続けた。


「ここにある気持ちって、簡単じゃないじゃん。雪乃が俺達の関係を身体だけにしてるつもりかもしれないけど…―――俺は選んだよ、雪乃のこと。ちゃんと選んで好意を持って抱いてる。女々しいって思うかもしれないけど、それが俺だから。ちゃんと俺の言葉受け止めて考えてよね。」


…夏喜からこんな真面目な話が出てくるなんて思ってもみなかった。


「…うん、ごめん。」


そうとしか言えなかった。今まで適当に生きてきた罰が当たった?

完全に遊びだと思っていた夏喜が、本気だったなんて。気づきもしなかった。



―――馬鹿は私の方じゃない。


気まずくて、半分逃げるみたいに夏喜の家から出てきた。

あの日以来、初めて自分の家に帰る。電車を降りたらバケツをひっくり返したみたいな雨が降っていて、傘をさそうとしたら突風が吹いてベロンと裏返ってぶっ壊れた。


「なによ、オンボロ。」


コンビニの前に置かれたゴミ箱に、壊れた折りたたみ傘を捨てると、この大雨の中、家に向かって一歩進んだ時、だった。


「雪乃さん!」


大きな黒い傘を私の真上にさし出したユーセイ。黒づくめの服とセットされた黒髪。いつもの香水に少しだけホッとしたなんて。