とめどない涙1


「なんでいるのよ、」


差し出された傘を突き返してそう言うも、ユーセイは自分が濡れても又私の頭上に傘を持ってくる。

唇を噛み締めるユーセイは、下がった眉毛のまま「話したくて。」小さく呟いた。


「何を?今更何を話すの?」
「ごめんなさい。でも俺、―――諦められない。そんな簡単なら最初から好きになんてなってません!」


今にも抱きしめそうなユーセイから一歩離れて「触らないで、」…冷たく言い放つ。そのまま傘から出てこの大雨の中歩き出した。


「分かった今日は帰ります。でもこれ、使ってください。風邪でもひかれたらたまんない。」


受け取るつもりもない傘だったけど、無理やりユーセイに掴まされて仕方なく私はその傘をさして家まで帰った。

でも翌日、ものの見事に風邪を引いて、朝一で会社に電話をしたら鼻声のユーセイが電話に出た。




【すいません、何の役にもたちませんでしたね、僕。】


その声を聞いて、やっぱり八木はユーセイなんだって。心地よく私を抱いたあの声全て、この八木と同じなんだって思うと、やっぱりやり切れなくて「澤くんに代わって。」八木の言葉を無視してそう言ったんだ。


【もしもし、雪乃ちゃん?大丈夫?】
「澤くんごめんね。熱出ちゃって、今日1日だけお休みします。」
【仕事は全然気にしないでいいよ。それより雪乃ちゃんここんとこちょっとおかしかったからそっちのが心配。…もっと俺の事頼ってくれていいんだよ。】


今は誰の優しさにも触れたくないなんて、言えないけど。電話越しに澤くんが心配している事は分かる。有難い。でもやっぱり、


「うん、ありがとう。明日には行くから。部長に代わって貰える?」
【…分かった。でもなんかあったらいつでも聞くから。ね?】
「うん。本当にありがとう。」


結局、人に甘える事もできない私は、たかが風邪をひいただけで、この世で一人ぼっちになった気分になるなんて。

こんな時、連絡できる誰かがいれば、私の歪んだ性格もちょっとは変わるんだろうか?