とめどない涙5


仕方なくフロアに戻ると、八木が書類を抱えて誰かと喋っていた。


「八木さん、受付にシーベックスさんお見えだそうです。」


派遣の女がそう言うと「あ、今行きます!」慌てて書類を抱え直す。


「じゃあすいませんけど、午後戻ったら打ち合わせお願いします。」
「はい、よろしくお願いします。」


パっと顔をあげた瞬間、八木の視線が私を捉えた。ちょっと鼻声の八木は気持ち赤い顔で…。


「熱あるの?」


そう聞くと苦笑いで「大丈夫です。」って笑うんだ。完全に私のせいじゃないのよ。


「何度?」


背伸びをしてヘラヘラしている八木のオデコに手を伸ばすとカアーって真っ赤になる。だけど触れたそこは燃えるように熱くて…


「雪乃さん俺…、」


また無意識でなのか私を「雪乃」って呼ぶ八木の持っていた書類を奪い取る。


「見せて。」
「あ、はい…。」


パーっと見た後、八木を見上げると、ちょっとだけ苦しそうな顔で、首元にあるネクタイをほんのり緩めた。


「これ私の仕事。一緒に行く。」
「…でも、」
「…ユーセイ、分かったから、ありがとう、私のために。」


名前を呼んでそっと腕に触れると、八木が泣きそうな顔で照れ笑い。

ーーー私の大好きな照れ笑い。