無意識の感情5


「翔太くんとこのCLUBで時々バーテンしてるユーセイでしょ?ねぇねぇ、すっごい筋肉!これはやばい、」


ギューギュー抱きつく香澄ちゃんにイラっとした。だってユーセイだって満更でもないって顔で。


「…雪乃さん!!あのちょっと離して。」


くるりと向きを変えて自分のフロアに戻ろうとする私をユーセイが呼び止めた。


「あれ、そーいう事?」


なんて香澄ちゃんに言われたけど、胸の中のモヤモヤがとれることもなく。エレベーターホールに行くとちょうど無人のエレベーターがきてそこに乗り込んだ。でも、ガンって音と閉まったはずのドアが開いて目の前にはずぶ濡れのユーセイ。迷うことなく乗り込むとエレベーターのドアが閉まった。


「雪乃さん!」
「………、」
「怒らないで。俺はあなたしか見てない。」
「別に怒ってないし、」
「じゃあこっち見て?」


濡れたユーセイの手が私の頬を掠める。顎をクイって指で上げられてユーセイに視線を奪われれる。途端に胸がギュッと痛くてなんでか泣きそうで。


「なによ、」


いつもの丸眼鏡もかけていない完全にユーセイの姿の八木がそこにいて、悔しいけどドキドキして目が離せない。久々に見たユーセイの姿に何も言えなくなる。


「俺、少しは自惚れてもいいですか?さっきちょっと妬いてくれたって。」
「…馬鹿じゃん。」


そう言うけど、ユーセイの指は私の唇をゆっくりとなぞる。ゾクッとしそうなそれにゴクリと唾を飲み込んだ。


「ごめん、触れたくてたまんない。…嫌なら俺の事突き飛ばしてください、」



ずるいよね、そんなの。本当はもう分かってたの。無意識でユーセイを探してしまっていたことも、無意識でユーセイを気にしてしまっていたことも。

近づくユーセイにそっと目を閉じると、変わらない優しい温もりが唇に触れたーーー