別れの先へ3


何となく無言のままユーセイ宅に着く。一度離れた時はもう、二度とここには来ないって思っていた。前を歩くユーセイが振り返って私に手を差し出すからそれをしっかりと掴んだ。

2人でエレベーターに乗って最上階のボタンを押すユーセイの腕にキュっと抱きつくとそのまま私をその胸に閉じ込めるように抱きしめてくれて。

ーーあぁこの温もりがこんなにも安心できるものなんだって、今更ながら実感。


「ユーセイ…。」
「うん?」
「…八木、」
「え?はい、」
「後で履歴書書いて。」
「え!?履歴書?」
「うん。だって私何も知らない。ユーセイと出会うまでの過去。バーテンユーセイ以外の、八木勇征がどう生きてきたか、ちゃんと全部教えて。」


過去を知りたいと思った人なんて初めてで、ちょっと笑っちゃう。でももう間違えたくない。目の前にいるこの人を失いたくないんだ。


「雪乃さん、うん、全部教えます。」


エレベーターを降りてドアの前まで誘導される。よく見るとYAGIって表札がかかっていて、私はこれすらもちゃんと見ていなかったんだと呆れた。

カードキーでドアを開けると大理石の玄関。カチャっとドアが閉まると勝手に閉まるロックに、私はその大きな背中にギュッと抱きつく。

靴を脱ごうとしていたユーセイが止まる。


「八木勇征。」
「…はい。」
「あなたを愛してる。だから、だからね、」


言葉が続かなくて、勝手に涙がこみ上げる。大切な人に愛を伝える事がこんなにも勇気がいって愛おしいことなんだと、ユーセイが私に教えてくれた。もう二度とこの手を離したくない。誤魔化しのきかない自分の気持ちに嘘はつきたくない。


「雪乃さん、顔見せて。」


ふわりと反転したユーセイが、泣きそうな顔で私の頬を包み込む。少し照れた顔で笑うと、ユーセイがゆっくりと近づく。


「僕も、あなたを愛してる。もう二度と離さない。」


ポロリと零れる涙をユーセイの指が拭うと、この瞬間からキスの時間に変わったーーー

ねぇ、勇征、変わらず愛をくれてありがとう。