―――顔のいい面白い男を捕まえる!なんて意気込んでいた少し前までの私。
肩を並べて歩くにはイケメンが良いとなんの迷いもなく思っていた少し前までの私。
それが自分の幸せだと信じて疑わなかったけれど、自分じゃどうにもできないのが恋で。苦しくてもどかしくて涙が零れるのが愛で。
私はそれをこの人に教えて貰った。
「八木、内線。庶務の女から。」
思いっきり低い声で受話器を置くと、苦笑いで勇征が受話器をあげた。
「雪乃ちゃん、顔に全部出てるよ。ほんと可愛いね。」
澤くんが私の頭を撫でると今度は勇征が目を大きく広げる。だからそれが嬉しくて「澤くーん!」無駄に名前を呼んで見つめると、勇征が慌てて電話を切ってこちらに歩いてくる。
「澤本さん!」
「怒るなよ、俺のせいじゃない!」
「分かってます。けど簡単に触らないでくださいよ、俺のに。」
「…言うねぇ、八木!」
「言います。俺のなんで。」
そんなくだらない言い合いを見ている事が馬鹿みたいに面白くて、もっとヤキモキさせたくなる。
「あ、夏喜だ!」
スマホを持って立ち上がる私を片手で引き寄せる勇征。
「雪乃さん!?」
「なーに?」
「いや、そのまだ、」
「まだ?」
「…夏喜さんと?」
「繋がってるか?って?」
「はい、」
「内緒。」
ニッコリ微笑むと困ったように勇征が呟いたんだ。
「適わない、あなたには。」
そんな顔が可愛くて「冗談よ。」って笑うと、嬉しそうに照れ笑い。
私の大好きな勇征の照れ笑い。これがあれば何もかも超えていけるって大袈裟だけど、そう思うんだ。
*END*