絶対の絶対に陸ちゃんにはバレたくない…――――
「…慎くん。もう止めよう、こんなの。私やっぱり無理だよ。」
ベッドの上で煙草を吸っている慎くんに向かってそう言う私も、シーツで身体を隠しているなんてはたから見たら笑っちゃうような光景だって分かってる。視線を私に移した慎くんはぽってりめの唇を軽く開いて「超無理。」って一言。
こんな関係、いつか絶対に陸ちゃんにバレる。その前にやめなきゃ…って思うのに、
「ずるいよ莉子さん。遊びなら最初からしなきゃいいじゃん。俺は別れない。」
断固拒否の慎くんの言葉は間違っているけど、正しい。最初に断るべきだった。それができなかったのは私で。
ただただ陸ちゃんへの罪悪感が日に日に大きくなっていく一方で苦しいんだ。
――初めて彼、慎くんと会ったのは遡ること一か月前だった。
「こんにちは、サヤマ急便です!」
出版社の受付をしている私は、サヤマのお兄さんとほぼ毎日顔を合わす。学生バイトだっていう慧人くんは笑顔の可愛い人懐っこい子だった。最近この区域の担当になったようで、今日も三度目の訪問に思わず笑顔が零れた。
「ご苦労様です。外、暑いよね?よかったら飲んでください。」
スポーツドリンクを手渡すと「え、いんですか?」大きな目で私を凝視。その顔もまた可愛くてニッコリ微笑んだ。こういうの本来はよろしくないんだろうけど、汗だくで荷物を持ってくるにも関わらずその爽やかさゆえに、正直な所キュンキュンしていたんだ。
「うん。内緒ね!」
小さくそう言うと、慧人くんが顔を真っ赤にして笑う。そのまま受け取って一口飲むと「すげぇ美味しいです。」ってまた照れ笑い。可愛い…なんて単純に思っていたんだ。
その日の帰り、駅前のスーパーで夕飯の買い物をしていたら「莉子さん?」ふわりと甘ったるい香りに振り返ると、私服の慧人くがこっちを見ている。
「え、慧人くん?あれここ、地元?」
「はい。僕この近辺なんです、家。」
「わー偶然!私もだよ〜。」
「なんか嬉しいです。制服以外の莉子さん初めてですね。めっちゃ可愛い。」
…可愛いなんて陸ちゃんにしか言われないからどう答えりゃいいのかわかんなくて。
「お姉さんをからかわない!」
そう言うも「僕嘘はつけませんって。」にっこり微笑まれてドキっとしたのが本音だった。