何故か意気投合してそのまま慧人くんの家で鍋をやるって話にのってしまった。
…――本当は陸ちゃんと外食のはずだったけど、急遽仕事の接待が入ってしまってそっちに行くことになった陸ちゃんを心のどこかで責めているのだろうか?こんな時、香澄がいたらあんなことにはならなかったというのに、今日に限って香澄は最愛の恋人健太くんとデートって。
「お邪魔します。」
「すいません汚くて。」
そう言ったけど、独り暮らしだっていう慧人くんの家は全然汚れてなんてなくて、可愛い顔に似合わず思いの外シンプルだった。
「…誰!?」
「あ、まこっちゃんごめん。ほらバイト先の出版社の受付の莉子さん。偶然スーパーで会って誘っちゃった。」
慧人くんの言葉に煙草を吸いながらジーっと私を見た彼は「あー慧人がよく可愛いって言ってる莉子ね。」…まさかの呼び捨てに苦笑い。
慧人くんみたいな可愛い子は好きだけど、捻くれてる子はいけ好かない。ただ残念な事に、この子の服装だとか髪型だとかは簡単に言うとタイプだったなんて。
「ちょっと余計な事言うなって!…あの、気にしないでください。」
真っ赤な慧人くん可愛いーって、私は「聞こえたけど今日は聞かなかった事にしてあげるね?」…なんて余裕なのは私が年上だって事と、右手の薬指にある陸ちゃんとのペアリングがそうさせているのかもしれないなんて。
同じ大学の一つ先輩だっていう慎くんは、若干偉そうに見えるものの芯がしっかりしているだけなのか、ただの頑固ボーイなのかもしれないって勝手に思った。
「慧人もう眠いんじゃん?そろそろ帰るよ。」
12時を超えた頃、瞼の下がった慧人くんが両手で目を擦ってソファーに転がった。だけどそんな慎くんの言葉に上目使いで私の手首をキュっと掴んだ。
「莉子さん、帰らないで。」
「…へ?慧人くん?」
完全に酔っぱらっているんだろうけど、私の腕にギュウって抱きつく慧人くんはやっぱり甘ったるい香りがしてキュンとする。
――だけど、不意に聞こえたスマホの着信音にハッと慧人くんの腕から離れると画面を見つめた。
当たり前に着信は陸ちゃんで。
「送るよ。」
慎くんに荷物を持たれて家から出たんだ。