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「信じらんない!っていうか、あんなに健太くんのこと大好きだって信じてたのに何考えてんだか!?ねぇ、そう思うよね?」
「…絡むねぇ今日。」
相変わらずのヘビースモーカー慎くんはカウンターに運ばれたお酒の中に入っているさくらんぼを指で取るとそれを当たり前に口に含んだ。
「ちょっと!それ私の!返してよぅ!」
「悪酔い面倒くさ。」
「飲まなきゃやってらんないわよ!」
ダンってカクテルを置くとチラリと慎くんに視線を移す。今日も陸ちゃんは接待で帰りが遅い。新プロジェクトの開拓でここんとこ結構な勢いで毎晩飲みに行ってる。そこに不満なんてないはずだけど、こうして慎くんを誘ってしまうってことは、少なからず寂しいのかもしれないなんて。素直に寂しいって言えないからこうして慎くんを誘ってしまったんだけど、後になって思えばそれが間違いだったんだろうと。
「たんに勝ったんでしょ、天秤にかけた時に。」
「え?」
「香澄ちゃん。大好きな彼氏よりも浮気相手との時間が欲しいって…。仕方ないんじゃない?誰でもあるでしょ…――寂しくて一人でいたくない夜が…。」
コトっとカウンターの上、私の手の甲に慎くんの大きな手が重なった。冷めた私の心にほかほかの温かい温もりが落ちて言葉が止まる。ニッコリ微笑んだ慎くんは、ベっと舌を出すとそこにあるさくらんぼの茎。
「知ってるよね?これ結べる人って…、」
そこまで言うとカウンターの椅子の背もたれに腕をかけて耳元に顔を寄せた。
危険信号が大音量で鐘を打っているのが分かる。だって私には陸ちゃんって素敵な何の不満もない恋人がいるんだから。それなのに、慎くんに触れられたわけでもないのに、耳にほんのり吐息がかかっただけで身体が全身熱くなる。
この誘いにのったら私、香澄のことなんて言えない。
何より、陸ちゃんを裏切るなんてできっこな…―――
「キスがうまいんだよ。…試してみる?」
耳に鼻を擦りつけて甘える慎くんに、死ぬほどドキドキしたんだ。