平成最後の夏が終わりを告げる頃、香澄はまさかの健太くんでも亜嵐くんでもない男に心を奪われていて。香澄の前の部署の澤本先輩の同期の雪乃さんは、陸ちゃんの後輩のバーテン勇征と付き合っていて。私だけが…私の心だけが平成に置いていかれた気分だった。
だけどそんな私の目の前、慧人くんと同じサヤマ急便の制服を着た慎くんが姿を見せたんだ。
「え、なんで!?」
「バイト。人足りねぇの、な、慧人。」
相変わらず可愛らしい慧人くんと並んで慎くんが大きなダンボールを運んでくる。
「ね、俺のピアス部屋に落ちてなかった?探してもなくて。」
耳元で小さくそんな事を言う慎くん。だけど次の瞬間、外回りから帰ってきた陸ちゃんが入口に入って来る。視線は当たり前に私を捉えて…、私は受付の衝立から出ると慎くんを無視して陸ちゃんの所に駆け寄った。
そんな私の頭をポンと捕まえて「出てこなくていいのに。可愛いやつだなぁ莉子。」ニッコリ微笑む陸ちゃんにホッとする。
「お帰りなさい、陸ちゃん。」
「はは、ただいま!」
この場で抱きしめるなんて当たり前にできないけど、陸ちゃんの腕がそっと背中を押すからそんなことが少し嬉しい。だけど…―――「莉子さん、探しといてよね?」…こんなに陸ちゃんと見つめあっているっていうのに、わざわざそこに入り込んだ慎くんに、内心頭突きしたくなるくらいの殺意を覚えたものの、責められた所で共犯な私には逃げ場なんてなくって。
「知り合い?」
陸ちゃんの言葉に「あ、うん。香澄のこと好きみたいでちょっと相談を…。」ごめん香澄!って内心謝りつつも、そんな私の嘘に騙されて「罪だなぁ〜香澄ちゃんは!」なんて笑ってくれる陸ちゃんに少しだけホッとしている自分がいるなんて。
―――つくづく自分が嫌になった。