見るからに高級そうな物が揃ってるバーテンユーセイ宅をまるで自分の家のように歩く雪乃さんがコトっとスマホを取り出した。
「…あの、」
「うん。ごめんね咄嗟に、」
雪乃さんが儚く微笑むとそこにあるボタンを押した。ざわついた動画。スーツの裾が映っていて、顔なんて見なくても分かる。陸ちゃんの腕が映っている。たぶん、陸ちゃんの左側にいるのはバーテンで、さらにその隣にいたんであろう雪乃さんが映したんだろうって。でも残念な事に声はしっかりと入っていて…
【時々知らない煙草の香りと、味がして。決まってそんな日は、LINEも電話も繋がらなくて…―――俺がほったらかしにしちゃったから。莉子を責める権利なんて、ねぇよな俺。自分が情けないわっ…。俺がもっと器用でかっこいい男だったら、莉子に寂しい想いさせなかったんだろうって。…ちきしょう、】
感情的に一つカウンターなのか握った拳で叩きつけた。
ボロボロ涙が止まんなくて。全部全部分かっててそれでも私を受け止めようとしてくれる陸ちゃん。自分が悪いって…
「どう、したら…ぃ、の…」
こんな事になって初めて本気で馬鹿だって。
「莉子、」
香澄がギュっと抱きしめてくれて、そこに顔を埋めて縋り付く。
「サヤマ急便と別れられないの?」
優しく聞く雪乃さんに首を横に振る。別れられないなんて言ってらんない。だけどこのまま陸ちゃんの所になんて、戻れるの?
「部外者がすみません。けど…今ならまだ間に合う。僕陸さんは、人を許せる人だと思います。本当に愛してる人を、どうか見失わないで下さい。」
バーテンユーセイの言葉に、私が今日まで見てきた陸ちゃんは何だったんだろう?って。私が一番信じなきゃいけない相手は陸ちゃんなのに、そんな事も分からない自分が情けなくて、やっぱり涙が止まらなかった。