君じゃなきゃ10


「別れてください。お願いします。」


両手をついて頭を下げる私に「は?」…困惑した慎くんの声。昨日の今日で申し訳ないと思ってる。でもこれ以上陸ちゃんを裏切れない。

いやもう裏切ってるけど、それでもやっぱり私の気持ちは陸ちゃんだって。雪乃さんの動画で苦しむ陸ちゃんを見て確信した。


「俺言ったよ?無理って。」
「無理は承知で頼んでます!慎くんの事、」
「遊びだったって?」
「…うん。陸ちゃん以外の人はいらない。」


何も言わない慎くん。顔をあげると口に手を当てて泣きそうな顔。一瞬怯みそうになる自分を奮いただせる。可哀相だって思うんなら、その分知らない所で苦しんでる陸ちゃんを想いたい…


「…俺、莉子さんにはこんな勝手でワガママな自分も出せるって思ってたのに。そっちは違くても、俺にとってあなたは唯一無二だったよ。信じて貰えないかもしれないけど。」


心が痛い。慎くんの真剣な言葉を嘘だなんて思わない。少なくとも、短い時間ではあったけど、私は私なりに慎くんが好きだった。


「もっと早く出逢いたかった。莉子さんが彼氏と出逢うもっと前に…。」


ツーって一粒涙を零す慎くんに、思わずギュっと抱きしめたくなる手を必死で抑えた。

「ごめんね。」って謝って抱きしめてあげたい衝動を必死で抑えた。

それでも私が選ぶのは陸ちゃんだから。こんな私を受け止めていれるのは、世界でたった一人、陸ちゃんだけだから。


「俺もう二度と女は信じない。」


そう言い残して慎くんは私の前からいなくなった。止めどなく零れ落ちる涙は、慎くんへの謝罪と、同時に陸ちゃんへの罪悪感。何より、不甲斐ない自分への責めの涙だった。