君じゃなきゃ11


「大事な話?」


眉毛を下げた陸ちゃんに私はコクっと頷く。雪乃さんの彼氏バーテンユーセイは陸ちゃんを「許せる人」だと言ってくれたけど、こんなこと許されない。もしも陸ちゃんが女と浮気していたなんて事を知った日には、私は間違いなく陸ちゃんを軽蔑してしまうだろうって。陸ちゃんを信じていた分、余計に。汚いって…


仕事を終えてあえて家じゃなく、飲み屋の個室に入った私と陸ちゃん。神妙な顔している私の事を不安気に見ている。


「…陸ちゃん私、陸ちゃんのこと裏切ったの。」


震える声で発した私の言葉に、陸ちゃんの表情から色が消えた。真顔で真っ直ぐに私を見つめる陸ちゃんに息を呑むこともできない。


「…うん、」
「お願いがあります。」
「お願い?」


…絶対に泣くもんか!って歯を食いしばって陸ちゃんから目を逸らすことなく小さく告げた。


「…別れたい…。」
「…俺じゃダメってこと?」
「そうじゃない、違うの。年下に言い寄られて調子にのって浮気した自分が許せないの。陸ちゃんの事一瞬でも裏切った自分が許せなくて、だからもう陸ちゃんには迷惑かけられないし…――これ以上幻滅されたくない。」


一緒に居たら自分の汚さが見えて、きっと苦しい。陸ちゃんみたいな優しくて強い人には私じゃない女の人がどこかにいるって…


「俺と別れてアイツのとこにいくんじゃないんだよね?」
「え?うん。カレとはきちんと別れました。」
「じゃあいいよ。許す。」


…え?吃驚しすぎて溢れ出しそうだった涙すら止まりかけた。目の前で胡坐をかいて座り直す陸ちゃんは自嘲的に笑う。


「俺、莉子が思うようないい奴じゃないって。」


そんな陸ちゃんの言葉が耳を通り抜けていく。


「人間だもん、間違いの一つや二つ、誰でもあるでしょ!」


どうしてそんなあっけらかんとしてるの?