君じゃなきゃ12


「だって莉子が浮気したのは寂しかったからでしょ?それって仕事優先だった俺の責任じゃん!俺が莉子のことちゃんと構ってれば、他の男になんて靡かなかった…――違う?」


真っ直ぐ見つめる瞳は笑っているけど真剣で。確かに寂しくないと言ったら嘘になる。今まで散々甘やかしてきてくれた陸ちゃんだったから、接待続きで一人ぼっちになった様な夜も多々あった。


「…でも、」
「俺のこと嫌い?」
「そんなわけない。」
「じゃー…好き?」


ちょこっと首を傾げた陸ちゃんのサラサラの髪が揺れる。


「大好き。」
「愛してる?」


普段は恥ずかしくてそんな事あんまり口にできないけど、今そんなことは通用しないって思うわけで。一つ大きく頷いてから「すごく愛してるよ。」ちゃんと答えた。

私の言葉に安心したように微笑む陸ちゃんに、止まりかけた涙がまたジワリと溢れ出そうになっていて…


「俺も、莉子のこと愛してるよ。だから傍にいて。ちゃんと話してくれて、ちゃんと別れてきてくれて…莉子の誠意は全部伝わってる。ここでね俺が意地張って莉子と別れたとしても…きっとどっかでいつも莉子を探しちゃうと思うの。だって今俺の中、莉子以外いないから。…そういう相手と同じ気持ちでいられるのって、なかなかないと思うし。だから大丈夫、俺は今目の前にいる莉子を信じる。だから莉子も俺の事信じてほしい…。愛してるのに別れるなんて選択肢、俺にはとてもじゃないけど選べないよ。」


泣くもんか!と決めた私の覚悟はいとも簡単に崩れて。陸ちゃんの優しい声と優しい眼差し、陸ちゃんを彩る全ての優しさが、私の心と身体全部に注がれているのが分かった。


「私でいいの?」
「う〜ん…。ちょっと違う。」


そう言った陸ちゃんは私の腕を掴んで引き寄せると、その場でふわりと抱き寄せた。


「莉子じゃなきゃダメなんだ、俺。」


…こんな素敵な人、二度と出逢えない。