「あっちのバイトは割がいいので。あ、バーテンの方。大学ん時長い事やってたんで、そこそこ貯めて買ったんですよ。」
「この車、も?」
「…これは親に免除してもらって…。」
「ふうん。元からお坊ちゃまなのね。」
「…嫌ですか?」
「へ?」
「そーいう奴、嫌い、ですか?」
「え?」
「雪乃さん、ハッキリしてそうですし。」
サングラスかけてるから目が見えないけど、昨日からなんだろうか、ユーセイの私に対する好意は感じる気がする。…勘違い、じゃないよね?
無言で見つめていると、ユーセイがこちらを向く。
「雪乃さん?」
「ユーセイって彼女いるの?」
この期に及んで女いる男が自宅に他の女連れ込んだりしないわよね?
「え、僕ですか?いませんよ…。雪乃さんは?」
聞き返されて浮かぶのは夏喜。はたして恋人と呼べるものかどうか…。ハンドルを握るユーセイの腕を軽く掴んで顔を寄せると、耳元で小さく「内緒。」って言ってやった。
口端を緩めたユーセイは、私の触れた腕をふわりとこちらに伸ばして、スッと髪を撫でた。
「ずるい人ですね。」
肩に触れた手は、私の頬をゆっくりと掠めて元のハンドルへと戻っていく。
心臓がトクンと音を立てたのが分かった。
戻った腕を追いかけるようにユーセイの肩に腕を乗せて顔を寄せる。
「目、見えないじゃない。」
「照れてるんです。」
「なんで?」
ユーセイの耳元で耳を指で触ると「ちょ、危ない!」って足をバタつかせた。だからそのまま反対側の手で太腿に手を添えると、ゴクってユーセイが唾を飲みこむ。
「ほんとに、あなたって人は…。忘れてませんか?僕も男だって…。」
「分かってるわよ。ちゃんと男として見てるもの。」
「え?…あ、この僕か。」
「は?」
「いえ。…信号赤です。」
サングラスを外したユーセイの腕が私の腰に回ると、目の前に彼の顔がドアップで止まる。
「また逢いに来てください…。」
そんな言葉の後、ちょっとだけ遠慮がちに、でも強引なキスが落ちた―――