悲しい乙女心3


―――信号待ちでキスとかドラマか!!!

なんて思う私の心は、ユーセイで埋め尽くされてしまいそうだった。



午後から出勤した私は、風邪をこじらせたって設定で真夏だっていうのにマスクを装着。

蒸れるし化粧落ちるしで最悪。…でもこの酒臭さがバレるわけにはいかない。加えて酒で浮腫んだ顔も浴びせられない。


「だるいなぁ…。」


一言呟いてチョコを頬張るとまたデスクのPCに向かってキーを打ち込む。


「保科さん。」


睡眠不足もあって、かなりオネム。いいよって言われたら3秒で眠れるんじゃないだろうか。斜め前の八木が丸眼鏡の向こう側、私を呼んだ。


「なに?」
「あの、入稿チェックお願いしてもいいですか?」


昨日の今日で、二度も同じミスを出すわけにはいかない。


「てゆうか、昨日のあれは誰かにチェック頼まなかったの?」
「あー…瀬口さんに頼んでOKだったので、」
「…瀬口、あのやろう。分かった、貸して。」


仕方なくこちら側から手を伸ばすと、八木が立ち上がって印刷した書類を持ってデスク横に立った。ふわりと香る香水なのか、心地よい香りがして…――−あれ、これ…。

げ、もしかして八木、ユーセイと同じ香水!?いやでも似てるだけよね。


「…なにか?」


思わずジッと見ていたせいか八木が苦笑いで私を見ていて。


「…なんでもないわよ。あんた香水なんてつけるんだ?」
「え?やば、忘れてた。…あっと…、」
「まぁまだ若いもんね。」
「…すいません。ちょっと朝一で色々ありまして…。」
「ふうん。」


興味ないからもういいわよ!なんてあえて言わないけど、そう思わせる態度で私は書類だけをスっと受け取るとそれに視線を移す。


「あとこれ、どうぞ。」


コトって置かれたのは黒いカップに入ったスープ?


「二日酔いによく効きますよ。」
「…は!?」
「…!!あ、いえ、その風邪です!風邪とか二日酔いとかに効くんですこれ!…ね?」
「ありがとう、」


ちょっと逃げるように八木がデスクに戻る。…二日酔い、バレたの!?なんだかなぁ。