「香澄、元気ないけど、あれから健太くんとどうした?」
同じ受付嬢の莉子が目の下にクマをつくった顔であたしにそんな質問。
「ああ、別れた。」
「はっ!?マジで!?」
「…合鍵返された、無言で。」
「もー、だから言ったのに。このままでいいの?健太くんと別れても。」
「いいも悪いも、仕方ない。亜嵐くんとえっちしたのは事実だし、今更どうにもできない。」
まぁ、健太ならそれすらも許してくれる…とは、正直思っていたけど、現実はそんな甘くはないんだって。
「…もっと大人な相手と恋がしたい。大人のオトコと、大人の恋。緩やかなでもしっかりした大人の恋…。」
「…次の恋みたいに言わないでよ。健太くんとちゃんと話しなって!」
「…話す気ないよ、もう。」
健太が、なのか…。
あたしが、なのか…。もうこれ以上無理だって思いたくないのかもしれない。話し合ってしまったらそこで終わってしまうもの、なのかもしれない…、
それはやっぱり嫌。
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なんとなく1人になりたくて、1度も入ったことのない地下にあるBARって奴に足を踏み入れた。見かけによらずお酒も飲めないんだけど、それでも今日はべろんべろんに酔ってしまいたい、そんな気分だった。
―――だけど。
「え、さわなつ先輩!?」
見たことある後ろ姿。サラッサラの黒髪と、スマートに着こなしている黒のスーツ。振り返った顔は優しげで、ほんの一瞬驚いたもののすぐにニコリと微笑んだ。癒される、その笑顔。
「香澄ちゃん!どうしたの?1人?」
「うん!」
ぜひ一緒に!って、言おうとしたけど、さわなつ先輩の反対側、同じようにこちらに視線を向けた。
「あ、土田!」
「こら香澄!呼び捨てしない!」
すかさずさわなつ先輩に突っ込まれたって事は、土田のが上の男なんだって確信した。まぁどー見ても土田のが年上だろうけど。
あたしを見てクスって笑った土田は「こんばんは。」ふわりとなんともいえない厭らしい香りが漂った。