土田哲也に抱かれた事であたしは専ら浮かれていたんだ。
セックスをするとすぐに眠ってしまうあたしは、土田の部屋でぐっすりと眠っていた。でもカチャカチャ音がして、薄ら目を開けたあたしに映ったのは、咥え煙草でパソコン画面に向かう土田の姿。
「てっちゃん?」
あたしの問いかけに煙草を灰皿に置くとくるりと振り返った。
「ごめん、起こしちゃった?どうしてもあすまでに仕上げたくて、」
「………、」
「香澄ちゃん?」
「…あ、うん、なんでもない。それいつ終わる?」
「んー。あと30分ぐらいかな。」
「じゃあ早く終わらせてこっち来て、抱きしめて。」
「りょーかい。」
健太は、目覚めた時に傍に自分の温もりがないと嫌だろ?って、絶対にベッドから出たりしなかった。なんだろうか、この空虚感。
健太、何してるかな。大好きな餃子食べてる?
健太以外の男に抱かれたっていうのに、なんでかあたしの心は健太で溢れてしまうなんて。
でもきっとこんなのただの違和感。あたしはこの土田と生きていくって決めた。亜嵐くんのこともすっかり忘れていた私に健太から久々にきたLINEにはたった一言『別れよう』と。でも土田がいるからそんなの見ても屁でもないって。
―――そう、土田がいるから。
「はっ!?土田って、あの取引先のイケメン!?」
3日後、受付で一緒になった莉子に土田と付き合ってる事を伝えたら物の見事に大声。
このサヤマ急便と切れて、晴れて青山の莉子に戻った莉子は幸せそうで。
「うん。今日もデート。そのままてっちゃん家行ってくる。朝は車で送ってくれるって。」
そんなあたしの言葉に思いっきり顔をしかめた莉子。それから困ったように顔を伏せる。え、なに?
「…香澄さ、本当にいいの?健太くんのこと。」
妙に深刻な莉子に、どうしてか旨がドクンと音を立てた。
「もう別れたし、てっちゃん大人で優しくて最高だよ。」
あたしを見て1つ息を吐き出した莉子は、数秒視線を泳がせてから、真っ直ぐにあたしを見た。
「じゃあ言うけど。健太くんも、新しい彼女できそうだよ。陸ちゃん情報だから間違いないと思う。」
…なんだ、健太も別にあたしの事なんてたいして好きじゃなかったんだ。
なんだ、そっか。ふぅーん。