ポカンと健太を見上げるあたしに、「やっぱり俺がいなきゃ何もできないでしょ、お前。」ポスッて健太の手があたしの頭に乗っかる。
え、え、どうなってるの!?
「彼女、できそうなんじゃないの?」
「ごめん、嘘。」
「なんで、なんっ、」
「悲しいって思ったでしょ?…俺はその数百倍悲しかったよ、香澄の浮気。」
そんなの当たり前で。健太に愛されてるって浮かれていたけど、愛していたのはあたしの方で。
「ごめんなさい、もうしない。」
「じゃあもう1つ。」
「…え?」
「土田さんとはもう切れてる?」
…知ってたの?若干苦笑いで視線を莉子に移すもあたしを黙って見ている。隠していい事じゃないって、無言で莉子が言ってるのが分かった。
小さくコクっと頷くとスッと健太の小指があたしの目の前に差し出される、
「こいつらみんなの前で誓って。もう二度と浮気はしない!って。」
だからみんな揃ってるってこと?あたしは息を吸い込むと「二度としない。」ハッキリとそう答えた。
「皆さん、これからもこいつの事、よろしくお願いします。」
ポコって健太の腕があたしの頭をまた1つ優しく撫でた。それから振り返って「香澄、ありがとう。よく聞いて。」ふわりと抱きしめられる。
「健太?」
「香澄が俺を思うその100倍、けんたが愛をあげるから。だからけんた以外の男は見んな。」
土田が埋められなかったその距離は、やっぱり健太じゃなきゃダメなんだって。
自分と同じ気持ち以上の愛があたしは欲しい。こんなあたしの気持ちを理解して受け止めてくれる男なんて、この世に神谷健太以外いない。
そっと身体を離すとあたしの手を取ってそこにちゅ、と小さく口づける。でも次の瞬間…
「男避け。」
左手の薬指に嵌められたシルバーリング。愛を象徴するそのリングにまた涙が溢れる。
零れ落ちる涙を拭うと健太はチラリと後ろを振り返った。