悲しそうな颯ちゃんの横を通り過ぎて会社を出る。ドラマや映画みたいに追いかけてきてくれるわけもなく、一人で家路に着いた。
もう恋なんて懲り懲り。
それから4日間、颯ちゃんを避けた。ひたすら避けた。会議やら外出やらでほとんど顔を合わせることなく4日が過ぎたその日、隣の席の亜芽ちゃんが不満気な顔で私に言ったんだ。
「彼氏とよりを戻しました!」
...え!?だって颯ちゃんは?亜芽ちゃんは私を見てニッコリ微笑むと、一言告げたんだ。
「ゆき乃さん、素直にならなきゃ幸せ逃げちゃいますよ!」
...なんで、亜芽ちゃんが!?どーいうこと?
「あの、亜芽ちゃん、」
一歩亜芽ちゃんの方に歩み寄った瞬間、横から手首をギュッと掴まれた、痛いくらいにギュッと。
「やっとおった。ちょお顔貸しや。」
...普段温厚な颯ちゃんの、ちょっとだけ怒ったような顔に、なんでか泣きそうになったなんて。
「ど、どこ行くの?」
「ええから。」
「痛いよ、颯ちゃん。」
「離したら逃げるやろ、お前。」
う、それは、まぁ。大人しく颯ちゃんの後ろを歩く私は、その見慣れた大きな背中を見て胸が熱くなった。やっぱり亜芽ちゃんにも誰にも渡したくない、なんて今更思ってしまう程に。
あ、でも亜芽ちゃんは違うのか。
脳内で色んなことを考えていたら颯ちゃんが私をジッと見つめていて。第3会議室まで埋まることはほとんどなく、ここはいわゆるほとんど誰も使っていない部屋だった。
「力也に聞いたわ。」
そっと手を離した颯ちゃんは、おもむろに髪をワシャワシャと掻きむしってそう呟いた。
あのやろ、ペラったな。