「…本気?」
「本気。慧人にキスを教わりたい」
「…お前どーせ澤本がらみだろ?まぁいーけど」
慧人の手が壁をつたってあたしの肩にかかって、グイッと抱き寄せられる。
真剣な瞳があたしの唇を見つめながら、ゆっくりと重なり合った。
まさか幼馴染みのこいつとこんなことする日がくるなんて思ってなかったけど、夏輝先生の為なら何でもしたいって気持ちの方が強いあたしは、“大事な気持ち“が何一つ見えてなかったんだ。
「ちょっ…」
いつの間にか床に押し倒されている展開に、思わず慧人の身体を腕で押し返した。
あたしの上で艶っぽい笑みを浮かべる慧人は、言うなれば男前。
でも…――――
「イヤッ!」
こんしんの力で慧人を突き放すと、乱れたシャツを指で押さえてあたしは部室から逃げ出した。
初めて慧人を怖いと思ったんだ。
馬鹿な真似はよせ!って、夏輝先生に遠くで言われた気分だった。