取引先っていっても博報道の若手は仕事よりもプライベートを充実させるために生きているように思えて。
もちろん仕事は大事だし俺もやりがいは感じている。
この会社に入らなかったら朝海と出会うこともなかったし、今の生活にはほどよく満足もしている。
だからこいつらと話が合う。
仕事人間にはなりたくない。
俺はプライベート重視で生活してるんだ。
飲み始めて2時間が過ぎた頃、LINEにメッセージが届いた。
【ナツー。これから帰るよー!ちょっと酔ってるかもわたしー】
はぁ!?
外でガバガバ飲むなって言ってんのに、たく。
「悪い、女から呼び出し!つーわけで帰るな!」
そう言って財布から五千円を出すと机に置いた。
女から呼び出し…これがこいつらには唯一帰ってもいい暗黙のルールで。
「どっちの女?」
唯一俺の秘密を知っている樹がニヤっとしながら小声で聞いたんだ。
俺は笑って樹の肩に腕をかけると耳元で小さく囁いた。
「先輩の彼女の方…」
「懲りないね、夏喜も!」
「そりゃどーも!」
樹から離れてコートを羽織ると、俺はすぐに店から出て大通りでタクシーを捕まえる。
向かった先は都内のマンション。
俺の住むマンションとは程遠いそこへと、流行る気持ちを抑えて行った。